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怪我による心の負担を和らげるコツ

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負傷した患者の立場になって「歩む」ことほど、謙虚で共感を育むものはありません。

怪我は痛みを伴い、日常生活を妨げ、苛立ちを引き起こし、あらゆる面で本当に辛いものです。

筋骨格系の外傷やアスリートの心理的負担についてはよく知られています。多くの研究は、重度の整形外科的外傷やアスリートに焦点を当てていますが、軽い怪我や一般の人々の怪我でも、個人に深刻な影響を及ぼすことがあるのです。

この記事の目的は、負傷した患者をサポートする際に考慮すべきことについて取り上げることです。これらの配慮があることで、患者のリカバリーの経過が、身体的にも精神的にも、良くも悪くも大きく変わる可能性があります。

これは諸刃の剣となる場合があり、臨床家として、ネガティブな信念を患者に押し付けないようにすることが重要です。

最適な治療ガイドラインに従っていますか?
怪我に対してどんな考え方や信念、意見を持っていますか?
痛みに対して健全な向き合い方ができていますか?

先日私の身に起こったことなのですが、第4MTP関節包や側副靭帯への強い打撃を受け、初めは「数日で回復するだろう」と思っていたところ、その楽観的な予想が崩れ、実際には週単位で回復を見込むことになると気づかされました。これは、臨床家として、患者と一緒に話し合い、対処すべき(そして時に見逃しがちな)事柄について改めて考えさせられるきっかけとなりました。

怪我がもたらす影響

怪我は生活に大きな支障をきたすものであることは間違いありませんが、時にその影響はその人の生活のあらゆる側面にまで及ぶことがあります。

身体的な影響が大きいのはもちろんで、中には他の人以上に影響を受ける人もいます。ですが、怪我が個人に及ぼす心理的な影響も無視してはならない重要な側面です。

患者がクリニックに来院した際、その怪我がその人の生活のどの側面に影響を及ぼす可能性があるかを考えることが重要です。筋骨格系の怪我そのものにとどまることなく、程度の大小に関わらずその部位が動かせなくなることが、日々の生活にどのように影響するかを考えられていますか?

ひいては、それが日常生活、家庭での役割、趣味活動、さらには仕事にどのように影響を与えるのかを考えられていますか?

これはまさに、病状だけでなく、目の前の「人」を治療することを忘れてはならない場面です。

職業における影響

筋骨格系の怪我は、通常の職務への支障をきたすことがあります。もしその怪我が労災補償の対象でない場合、通常、雇用主には負傷した従業員に対して適切な業務を提供しなければならない法的義務はありません。怪我が仕事に支障を与えず、また作業環境における健康や安全面でリスクを増すような状況でなければ、その怪我の影響は最小限にとどまるでしょう。

しかし、怪我が原因で仕事ができなくなったり、有給休暇が十分でなかったり、またはそのような休暇制度が整っていない場合、経済的な影響とそれに伴うストレスはとても大きくなるでしょう。

筋骨格系の怪我を抱えていながら通常の業務や適切な職務に従事できる場合であっても、回復中にその業務に対する何らかの影響が出ることがあります。

例えば、怪我のために頻繁に休憩を取らなければならない場合や、診察のために仕事場を離れる必要があるときなどです。

さらに、怪我の種類や患者の状態、職務内容によって、怪我が作業効率や認知機能に影響することがあります。これは身体的な影響(動作が遅くなるなど)や痛みから引き起こされるもので、特に痛みはその人の心を疲れさせ、精神的に参らせてしまうこともあるでしょう。

私たちにできることは?

治療やアドバイスと同様、まずは自分の専門範囲内・知識内で行っていることを確認しましょう。患者や雇用主が、怪我からの回復期間に職場で安全に働き続けるための指導や助言を必要としているけれど、自分の専門外だと感じたり、不安に思う場合は、職業傷害に詳しい別の医療従事者に紹介することも一つの手です。

日常生活への影響

怪我が私たちの日常生活にどれほど大きな影響を与えるかは、過小評価できません。

家では作業のスピードが遅くなったり、まったくできなくなることさえもあり、それが大きなストレスや不満、不安に繋がることがあります。

特に周りに社会的な支援がない場合、この影響はさらに大きく、より一層つらいものとなるでしょう。

食料品の買い物や子供の送り迎え、犬の散歩、洗濯、料理を準備する際に立っている時間など、日々の家事全てが影響を受ける可能性があります。

これらの点について患者と話し合い、一緒に探っていくことはもちろん私たちの役割です。

また、怪我による負担を少しでも減らせる方法を患者と共に考えることもできるかもしれません。

私たちにできることは?

大切なのは、共感を持ってサポートし、特に自立している人(それが自身の選択である場合も含め)や支援ネットワークがない人に対して自己への優しさを忘れないように伝え続けることです。

診察の際にこれらについて話し合い、患者が「大丈夫です」と言っていたとしても、もし心配な場合は電話で確認し、改めて質問を振り返ることは私たちの役割の範囲内だと思います。

診察の場でさえ、患者は多くの情報を処理する必要があることから、負担となっていることがよくあります。

さらに、多くの人(私自身も含め)は日常生活の中で怪我がどれほどの影響を与えるかを過小評価しがちです。

余暇活動

運動をすることは、身体的にも精神的にも、そして社会的にも多くの良い効果をもたらします。

多くの人にとって、運動は生活の中で感じるさまざまなストレスに対処するための大切な手段です。

こうした手段が制限されたり失われたりすると、大きな悪影響を及ぼし、また、その影響はすぐに現れることがあります。

怪我をすると、人はさまざまな感情やストレスを抱えることがよくあるでしょう。

怪我に伴う感情的な反応には、悲しみ、苛立ち、モチベーションの低下、フラストレーション、怒り、孤立感や無関心などが挙げられます。また、睡眠や食欲の変化が伴うこともあります(AOSSM – コンセンサスステートメントより)。

筋骨格系の怪我や手術を受けた方々と10年以上関わる中で、運動を続けることが精神的にも身体的にもいかに重要であるかを実感してきました。

怪我の回復中だから運動をやめるように、と指導するのは、臨床家にとって安易で怠慢な対応と言えるでしょう。
こうしたアドバイスは、良い効果よりも悪影響をもたらすことが多いのです!

筋骨格系の怪我への対処方法としては、Blaise DuboisとJean-Francois Esculierによる「Soft-tissue injuries simply need PEACE & LOVE」(2019年BJSM刊)を参考にするのが良いスタート地点です(詳細はこちら)。

これらの推奨事項は、筋骨格系の怪我を抱える人々の経験や回復結果において、さまざまな要素がどれほど重要かを裏付ける強力なエビデンスに基づいています。

私たちにできることは?

負荷管理の基本ルールについての詳細はこちらのブログへ

運動を継続するためのサポートにはさまざまな方法が存在します。

私の個人的な経験となりますが、こうした選択肢を探ることへの意欲が、10年以上前に筋骨格系の管理の道を掘り下げるきっかけとなりました。

地方で働いている皆さんなら、サービスの選択肢が限られている現状に共感していただけるのではないでしょうか。

小さな町で働いていた頃、筋骨格系の怪我を抱える多くの患者を担当していたのですが、患者たちはそれでもジム通いを続けたいと希望していました(ジムは私のクリニックへの紹介元でもありました)。

患者(そして私自身)の多くの不満をきっかけに、怪我を考慮しながらトレーニングを続けられる代替的な筋力トレーニングプログラムを模索しました。

その結果、私はフィットネスのCert IV資格を取得しました。これは、怪我を考慮したトレーニングプログラムを作成するための知識(と保険)を得るためのものでした。

その経験が楽しかったことをきっかけに、その後はリハビリを大学院で学び、今の私があるのです。

みなさんが同じことをする必要があると言いたいわけではありません。ただ、多くの人が運動を続けたいと思っていることを忘れないでください。私たちには、それをサポートする大きな役割があり、それは個人の力を介してでも紹介のネットワークを通じてでも可能です。

病理ではなく「人」を治療する

まとめると、私たち臨床家は管理を行う際、怪我そのものだけではなく、患者を一人の人として捉え、全体を考慮することが重要です。

病理ではなく患者そのものに焦点を当て、治療することで、怪我による負担を軽減し、身体的および心理的な悪影響を最小限に抑えることができるでしょう。

この記事が、筋骨格系の怪我を抱える患者へのより良いアプローチについて、少しでもヒントを提供できていれば幸いです。

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