こんにちはPTタイガーです!
今日は「なぜ変形性足関節症は少ないのか?」について組織学的、構造学的な2つの視点から解説していきます。
この記事ではあなたのこんな疑問にお答えします
・どうして変形性足関節症(以下足OA)は少ないの
・変形性膝関節症(以下膝OA)とどんな違いがあるの
さて、皆さん、足OAの患者さんって担当したことありますか?
私は、主病名として、担当したことは一度も無くて、既往歴としてある患者さんは何人か担当したことがある。
という程度です。
どうでしょうか。
働く場所によるとは思いますが、それにしても膝OAの患者数よりは圧倒的に少ないと思います。
どのくらい違うかというと
・膝OA 日本では50歳以上の約半数
・足OA 人口の1%
とも言われています。
圧倒的な違いですね。
さらにOAになる原因も全く違います。
膝OAが原発性(明確な単一の原因が特定できないケース)が原因である人が多い一方
足OAは外傷性が原因として最も多く、75%から80%とも言われています。
では、ここから、OAになる原因について解説しますね。
距腿関節は構造的に非常に安定している
1つ目は足関節が構造的に非常に安定しているという点です。
距腿関節はAnkle mortise(アンクルモーティス)と言われていて、めちゃくちゃハマり込みの良い関節です。
モーティスとは、ほぞ穴の意味で、大工さんが柱と梁をつなぐときに使う構造です。
イラストを見るとイメージがわくと思います。
なので、そもそも構造的に不安定になりにくく、
関節に変形が起こりにくいと考えられます。
すぐ下にある距骨下関節が荷重を分散してくれる
続いて2つ目です。
それは距骨下関節が荷重を分散してくれるからです。
足関節は、狭義の意味では距腿関節を指します。
ここで話をしている足OAも距腿関節の変形のことを言っています。
しかし、広義の足関節には
・遠位脛腓関節
・距骨下関節
が含まれます。
ドイツ語では、
・距腿関節=上足関節
・距骨下関節=下足関節
と表現することもあります。
そのくらい、距腿関節と距骨下関節は密に関係しています。
そして距骨下関節の動きによって、距腿関節にかかる応力を分散してくれるのです。
こちらも図を見ていただくとわかりやすいですが、仮に外側の靭帯損傷によって距骨が傾斜して、距腿関節の内側に負荷が集中したとしても距骨下関節の回内によって、距腿関節への負荷が均一化できることがわかります。
このようにして、距腿関節と距骨下関節は絶妙な関係を保ちながら距腿関節にかかる負荷をうまく分散させているのです。
軟骨が膝関節に比べ回復しやすい
最後は、組織的な要因です。
実は、そもそも軟骨の性質が膝と足では異なっているのです。
これは意外と知らない人も多いのではないでしょうか。
でもここがこの記事の中で一番伝えたいポイントです。
足と膝の軟骨の違いをまとめました。
つまり、足関節の軟骨は、膝関節の軟骨に比べ
負荷に強く、再生能力が高いということがわかります。
そして下のグラフからも分かるとおり、
足関節には、高度な変形が起こっていません。
まとめ
今回の記事では、
変形性足関節症が少ない理由を、変形性膝関節症と比較しながら解説してみました。
いかがだったでしょうか?
同じ人間の関節でも、部位によって、変形の起こり方は変わってきます。
そして、それはバイオメカニクス的なものではなく、代謝や組織レベルで違ってくるということがわかったのではないかなと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!
ではまた、次の記事でお会いしましょう!
足部の各関節の構造をもっと詳しく知りたい方はこちら
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参考文献
K E Kuettner et al.Cartilage degeneration in different human joints,OsteoArhtritis and Cartilage(2005)
Mario Herrera-Pérez et al.Ankle Osteoarthritis Aetiology,J Clin Med(2021)
Nicola Krähenbühl et al.The subtalar joint: a complex mechanism,EFORT Open Rev(2017)
Matthew J Kraeutler et al.Peculiarities in Ankle Cartilage,Cartilage(2017)