皆さんこんにちは、PTタイガーです!
今回は、下腿三頭筋の作用は内返しなのか?
というテーマで書いていきます。
非常に強力な底屈筋として知られる下腿三頭筋。
その前額面上の作用は、
内返しでしょうか?
外返しでしょうか?
「エッ、内返しじゃないの?」
と思った先生。
その答えは、、、
教科書的・一般的には内返しだが、一部の研究では外返しと報告しているものもある。
また、距骨下関節(踵骨)の肢位によって変わる。
というのが答えになります。
では、なぜそうなるのか。
について詳しく解説していきます。
下腿三頭筋は内返し筋か?
上の図は、足関節・足部の筋がどのような作用を持つかを示す際に良く用いられます。
距腿関節と距骨下関節の軸があり、そのどちらに腱が走行しているかによって、4つの運動方向に分けています。
底屈ー内返し
底屈ー外返し
背屈ー内返し
底屈ー外返し
このように4分割することで、足部の筋の作用をわかりやすく分類できますね。
そして、この図と同様に多くの解剖学書には
「底屈ー内返し」
と記載されています。
モーメントアームとは
上の図にもあるように、下腿三頭筋(アキレス腱)は距骨下関節軸の非常に近くに位置しています。
ここがポイントで、軸からの距離が近いと
・その関節に対する作用が弱い(より大きな力を必要とする)
・関節の肢位によって作用が逆転する
などの特徴があります。
そして、この関節軸からの距離は
モーメントアーム(レバーアーム)
と言います。
モーメントアームは
力が作用する点から回転軸(回転中心)までの距離
です。
力のモーメント(トルク)は、
力×距離
で計算できます。
力のモーメントとは、回転させる力ですね。
シーソーや釘抜きをイメージするとわかりやすいです。
支点から距離が離れれば離れるほど、
てこの原理で、軽い力で、強い回転力を生むことができます。
これを人間の身体に置き換えると、
関節モーメント
=筋力×モーメントアーム
となるわけです。
これは、下腿三頭筋と後脛骨筋を比較するとわかりやすいです。
この図を見ていただくと、矢状面におけるモーメントアームは、圧倒的に下腿三頭筋の方が長いことがわかります。
一方で前額面はどうでしょうか?
反対に後脛骨筋の方が長いことがわかりますね。
つまり、同じ筋同士の比較でも見ている面によって、モーメントアームの長さは全然変わってきます。
下腿三頭筋は底屈に有利
後脛骨筋は内返しに有利
というわけです。
モーメントアームの落とし穴
モーメントアームの基礎がわかったところで、モーメントアームに存在する落とし穴を紹介します。
それは、回転中心に近い位置を走行する筋は、関節軸の個体差や肢位によって、作用が逆転してしまうことがあるのです。
筋作用の逆転と言って、良く出てくるのは梨状筋や長内転筋ですね。
梨状筋:外旋筋 股関節屈曲60°以上で内旋筋
長内転筋:屈曲筋 股関節屈曲70°以上で伸展筋
これらは、モーメントアームの方向が、筋の走行と関節の回転中心との相対的な位置関係に基づいて決まっているために、筋の作用線が回転中心をまたぐと作用が逆転するという現象を起こすのです。
そして、足部の筋では、まさに下腿三頭筋が、距骨下関節軸とかなり近い位置にあるために、このような現象が起こりやすくなります。
下腿三頭筋に関する図を見てみましょう。
これは、踵骨(距骨下関節)の位置によって、
内返しと外返しの作用が逆転していることを示す図です。
確かにこの図で考えると、距骨下関節が内返し方向に動くと、下腿三頭筋は外返しのモーメントアームを持つことになります。
もう一つ、注意する点があります。
それは、
モーメントアームの数値は、研究によってばらつきが大きいということです。
これはモーメントアームをまとめた論文の図です。
けっこうバラツキがありますよね。
下腿三頭筋は、内返しー外返し0°のとき、外返しとなっている論文もあります。
もう一つ、似たような筋肉があって、それは長母趾伸筋です。
こちらも距骨下関節の軸には近く位置していて、その作用は教科書的に外返しとされていますが、実際にはデータを見ても内返し作用を持っていますよね。
という感じで、まあこれはモーメントアームに限ったことではないですが、学びを深めていくと、教科書的なものと、実際には違っているなんてことも良くあるんじゃないかなと思っています。
だからと言って、教科書的な知識が一番基礎となるので、そこは絶対軽視してはいけないですが。。
足関節・足部筋のモーメントアーム
最後に、足関節・足部筋のモーメントアームをまとめておきます。
先ほども言ったように、研究によってバラツキがあるため、一つの目安として捉えてください。
まとめ
いかがだったでしょうか?
今回は下腿三頭筋は内返し、外返しどちらの作用を持つか?
というところから、モーメントアームに関しての解説をしてみました。
教科書的な知識をしっかりと頭に入れつつ、いろいろな論文を読むと新しい発見がありますね。
それでは、最後までお読みいただきありがとうございました!
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