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リハビリにおける「少ないほど効果的」とは

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こと身体の損傷に対するリハビリテーションにおいては、「何かしなければならない」という気持ちに容易く陥りやすいものです – あらゆるリハビリエクササイズを処方したり、徒手療法を行なったり、電気治療を施したり…。

確かに、状況によっては上記のいずれか(あるいは全て)の介入が正当なこともあるのですが、 忘れてしまいがちなのは、治療成果を上げるためには臨床症状によっては「少ない方が圧倒的に良い」場合があるということです。

足底腱膜症やアキレス腱症を例にとると、これらは多くの場合、構造的な変化や機能的な欠損が ‘個人’ に生じる病態です。
しかし、これらの病態を発症する可能性のある人たちには、共通する ‘サブグループ’ がいくつか存在することを重要な注意点として覚えておく必要があります。

異常な機械的負荷がかかることで、結合組織に構造的な変化が生まれ、負荷耐性が低下することがよくあります。

しかし、これらのサブグループ間で見られる組織の変化はさまざまで、それが負荷耐性に影響を与えるため、機能回復を支援するために私たち臨床家がアドバイスすべきことや行うべきことが変わってきます。

座りがちな人たち(+/- 高齢者や糖尿病患者)では、アキレス腱および足底腱膜がより硬くなり、その結果、繊維へのストレスや破壊に至る前に、より少ないひずみや圧縮負荷にしか耐えられない組織となることがあります。
このような硬い結合組織の発達には、いくつかのプロセスが関与しています。例えば、理論上のプロセスとしてAGEsの増加に伴う(結果的な)コラーゲン架橋の増加が挙げられます。(Snedeker & Gautieri, 2014)

一方、比較的健康な結合組織構造に過度な負荷がかかることがより関連している活動的な人たちの場合、組織内でプロテオグリカン含有量の増加が見られるでしょう。
腱病変の反応期において、プロテオグリカンの流入は腱の断面積を増大させ、荷重の分散を促すと考えられています。
特に、プロテオグリカンはコラーゲンの繊維形成に関わるため、リモデリングに関連する他の機能の中でも重要な役割を果たしています。

高負荷が継続し、良い意味での適応が起こるための十分な時間が与えられなかった場合、基質、酵素、あるいは構造タンパク質の濃度が高まり、その結果組織がより柔軟になる可能性があると言えます。

このような硬さやコンプライアンスの違いは、機能回復を促進するために必要な組織の適応を引き起こす負荷のかけ方に影響を与えます。

どちらにせよ、適応が起こるには時間が必要です。
しかし、重要なのはその時間内に私たち臨床家が何を行うかであり、それは状況によって異なります。


臨床にどう応用する?

負荷のかかる活動や運動、およびその後の運動負荷量は、それに伴い起きる組織の適応に影響を与えます。
つまり、その患者に対するマネジメントプランを実行する前に、何がその人の症状の原因となっているのかを第一に理解する必要があります。

やりすぎなのか?

十分ではないのか?

硬すぎるのか?

柔らかすぎるのか?

第二に、その人にとっての理想的な機能を回復させるためには、組織が何を必要としているのかを理解しなければなりません。

処方される負荷とその適用 (例えば一般的な動作、ウォーキング、ランニング、ストレッチ、アイソメトリクス、エキセントリック や プライオメトリクス)は、いずれも結果としてその負荷を受けた組織の硬さやコンプライアンスの適応に影響を与えます。

Q)いつ負荷をかけ、いつ負荷を取り除くべきか、どう判断すればいいのでしょうか?

A.ⅰ)簡単に言えば、既往歴です。

A.ⅱ)もう少し詳しく言えば、患者の 既往歴 + 現れている病態に関連する個々のリスクファクターの相互作用への理解 + 病態が組織の機能に与える影響を理解、です。

骨のストレス傷害の発症とよく似ており、疲労・負荷に関連した病態、または不全に関連する病態(もしくはその両方の組み合わせ)が存在すると考えられます。

疲労・負荷に関連する病態では、通常であれば(過度な負荷が存在しなければ)負荷に耐える能力が十分にある「正常な」または健康な組織に対して、比較的異常な・過度な負荷がかかることで問題が生じます。

これに対し、不全に関連する傷害では、比較的「正常な」負荷が加わっているにもかかわらず、その組織が負荷に耐える能力を持っていない場合があります。
これは、運動不足やその他の健康上の要因によって、患部組織の質が損なわれていることに起因するでしょう。
例えば、老化や糖尿病による組織の完全性の低下などが挙げられます。
(ここでは骨ストレス損傷の話ではなく、腱障害や足底腱膜症の話をしています。)

疲労に関連する病態に対処する場合、単純に負荷を減らし、適応が起こるまで十分な時間を確保するだけで解決することが多くあります。既に過負荷状態であるところにリハビリエクササイズを加えると、むしろ問題を単に悪化させる可能性があります。

しかし、組織の不全に関連する病態では、負荷を適切に増やすことが最適なアプローチかもしれません。(病態に寄与する修正可能な要因にも対処が必要な場合があります。)

補足:’鎮静化’させる、症状を管理する、’負荷を徐々に増やしていく’前に、負荷がかかるのに最適な環境を整えるために必要なことは個々人によって異なるため、今回はその点を掘り下げていません。

下の表を使って、上記の例で示したようなリハビリエクササイズによる負荷のかけ方が病態をどのように悪化させる可能性があるかを確認してみてください

すべての患者とそのニーズは異なりますが、ここでの重要なポイントは、リハビリプログラムを成功させるためには、その時点での個々の負荷と容量の関係を理解する必要があるということです。

いずれにせよ、私たち臨床家は持続的で良好な組織の適応を得るために、定期的に負荷をかけることを目指しています。
しかし、初期段階に必要なアプローチには、より細かい調整が求められます。

本来、負荷をかけて耐性を高める必要がある人から負荷を取り除くことは、結果に悪影響を及ぼす可能性があります。

これに対し、長期的に持続可能な耐性を構築するための戦略を考える前に、現時点で負荷を減らして基準値に戻す必要がある人に負荷を追加することも、同様に悪影響を及ぼす可能性があります。

アキレス腱症や足底腱膜症に対する運動処方を開始する前に、「負荷を加える」ことで問題を悪化させる可能性がないか、その人の既往歴を十分に確認することをお勧めします。

参考文献

Juneja SC, Veillette C. Defects in tendon, ligament, and enthesis in response to genetic alterations in key proteoglycans and glycoproteins: a review. Arthritis. 2013;2013:154812. doi: 10.1155/2013/154812. Epub 2013 Nov 10. PMID: 24324885; PMCID: PMC3842050.

McMillan A, Landorf K, Gilheany M, Bird A, Morrow A, Menz H. Ultrasound guided corticosteroid injection for plantar fasciitis: a randomised controlled trial. J Foot Ankle Res. 2011 May 20;4(Suppl 1):O29. doi: 10.1186/1757-1146-4-S1-O29. PMCID: PMC3102950.

Parkinson J, Samiric T, Ilic MZ, Cook J, Handley CJ. Involvement of proteoglycans in tendinopathy. J Musculoskelet Neuronal Interact. 2011 Jun;11(2):86-93. PMID: 21625045.

Snedeker JG, Gautieri A. The role of collagen crosslinks in ageing and diabetes – the good, the bad, and the ugly. Muscles Ligaments Tendons J. 2014 Nov 17;4(3):303-8. PMID: 25489547; PMCID: PMC4241420.

Thorpe CT, Birch HL, Clegg PD, Screen HR. The role of the non-collagenous matrix in tendon function. Int J Exp Pathol. 2013 Aug;94(4):248-59. doi: 10.1111/iep.12027. Epub 2013 May 30. PMID: 23718692; PMCID: PMC3721456.

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