臨床家としてのキャリアの中で、(できれば)誰もが経験すべき最も大きな学びの一つは、「自分は全てを知っているわけではないし、患者の全てを担えるわけでもない」という理解を深めることです。
優れた臨床家の真価は、その場限りの治療にとどまりません。他の専門家の知識に頼るべきタイミングや方法を理解していることも特徴の一つです。
他の臨床家や専門家を紹介することに抵抗を感じる理由には、患者を助けたいという純粋な思いや責任感、内的・外的なプレッシャー、そして時にはエゴも含まれます。
自分の専門範囲外や普段の臨床であまり扱わない分野、あるいは特に興味のない分野について深掘りするよりも、その分野で患者をよりよく助けられる人を探し、紹介関係を築くことに時間を使う方が得策な場合が多いです。
「良い紹介」の効果を軽視してはいけません。

興味がある分野について深掘りするべきではないと言いたいわけではありません。知識を深め、学び続けることには賛成です。
私が伝えたいのは、a) 特に興味がない、b) 学ぶ時間やモチベーションがない、c) 自分の現在または将来的な専門分野ではない、d) ネットワーク内にその分野に詳しく意欲的な人がいる場合、その時間と労力を紹介関係の構築に使う方が賢明だということです。
視野を広げる
多職種連携ケアの利点を理解している人は多いですが、多職種環境で働いていたとしても、視点の転換が必要な場合があります。
一部の人は、多職種アプローチを考える際に、病態や解剖学的部位に対する「自分の領域」という意識を持っているかもしれません。
視点を転換する鍵は、私たちが身を置く幅広い健康やフィットネスのコミュニティに存在する多様で豊かな専門知識を認識し、それを大切にすることです。
管理計画の中で他の専門家の知識に頼ったり、患者をその人に最適だと考える専門家に託したりすることは、全人的で患者中心のケアを実践することにほかなりません。
限界を認める – それは欠点ではなく、強みである
それぞれの専門分野で経験を重ねる中で、よく起こることが2つあります。
1)知識や経験が深まり、自分の関心のある専門分野に特化していくこと。これが多くの専門家が存在する理由であり、臨床家も、患者もまさに求めていることです。
2)いくら経験を積んでも、臨床現場で出会うすべての問題において絶対的な知識を持つわけではない、と悟ること。
他の専門家(医療や技術、その他の分野)が優れた洞察や解決策を提供できる場面を認識することは、臨床家として劣っている証拠ではなく、むしろ強みです。
臨床キャリアの初期には/臨床を始めたばかりの頃は、患者から特定の問題や懸念について相談を受けたとき、大きなプレッシャーを感じることがよくあります。

この話題について質問されているということは、自分が知っているべきことなのでは?
でも、この話題についてはあまり詳しくない…
他のみんなは知っていて、自分だけ知らないのだろうか?
他にも自分が知らない話題がたくさんあるのだろうか?
こんな自分は臨床家として失格なのか!?
ポイント1 – すべてを知ることは出来ないし、その必要もありません。
ポイント2 – これを理解することで、余計なプレッシャーやストレスから解放されるでしょう
頼れる人や紹介できる人がいると気づいたとき、それは臨床家として成長するための扉が開く瞬間です。
広範な専門知識のネットワークを活用することで、実際には患者により多くの価値を提供できます。たとえ、自分が「少ししか貢献できていない」と感じるとしても。
強固な紹介ネットワークを持つことのメリット
紹介ネットワークを構築して活用することには、さまざまなメリットがあります。
まず第一に(そして最も重要なことに)、患者の治療結果と満足度が挙げられます。
患者が最適な解決策や専門家に紹介されたと感じたとき、それは間違いなく高い満足感をもたらします。
実際に解決策を提供したのが自分でなくても、その道筋を示したのが自分であれば、患者がそれを忘れることは少なく、口コミ紹介でもプラスに働くことが多いでしょう。
そして第二に、このような紹介ネットワークを構築することで、自分自身もその分野に関する知識を深めることができます。
他の専門家と密に連携し、紹介状やフォローアップの電話、直接会って話すなどの方法でコミュニケーションを取ることで、多くの学びのチャンスを得られるのです。
こうした連携で得た知識は、診断や評価スキルの向上、より個別化されたマネジメントプランの作成、そして紹介の効果を高めることに役立ちます。
紹介ネットワークを効果的に活用する
紹介先について詳しく理解し、紹介に伴う期待値を共有することで、提供される治療やサービス、紹介前後の情報交換の質を高めることができ、それ自体が治療の一環となる場合もあります。
紹介先に正確な情報を提供するためのスキルを磨き、それを実践しましょう。
これは臨床家として理解すべき最も重要な要素であり、身につけるべきスキルの一つでしょう。
サービスの質は、提供する情報の質によって左右されることがよくあります。不十分な情報を渡しておきながら、期待通りの結果が得られないことに不満を持つのは筋違いです。
よくある典型的な例として、特定の部位に病態が疑われる場合、診断画像の紹介状に「前足部の超音波検査、左前足部の痛み」としか書かれていないケースが挙げられます。
超音波検査士は標準的な前足部の検査を実施しますが、もし目的の部位が映らなかった場合、それは紹介状を書いた側の責任です。
情報の質が関係するもう一つの例として、靴に関する紹介が挙げられます。
患者が______の問題を抱えており、この靴が必要です。
ただし、靴の仕様は常に変化しているため、____の現在のモデルが必ずしもその人に適しているとは限りません。
このような場合、適切な紹介文の例として次のようなものが挙げられます:
患者は___の問題を抱えており___、___、___の特徴を持つ靴が必要です。これにより___と___を実現することを目指しています。靴は週に3回、_____の活動で使用する予定です。
靴の販売者は、自社製品について詳しく知っているはずなので、あなたが求めている要素やその理由を理解してくれるでしょう(し、そうであることを願います)。
ここでの主なポイントは、クライアントの最善の結果を目指す上で、自分の時間を効率的かつ効果的に使う方法を見極めることです。それは必ずしもそのテーマを自分で深く理解することではなく、その分野に詳しい専門家と連携関係を築くことにあります。
もちろん、基本的な知識を持つことは大切です。最低限の理解は必要ですが、時間や労力、エネルギーをどこに注ぐかを賢く考えることが、私たち自身だけでなく、ケアを求めるクライアントにとっても大きな利益を生みます。
このブログが何かしらの気づきを与えるものであったなら幸いです。