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エビデンスの臨床活用に必要な「マインド」とは?

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【海外足病医 タリーシャ・リーブ先生】x 【柔道整復師 紀平晃功先生】

目次

今回の内容は?

今回の議題は「エビデンスの臨床箇所のポイント」。臨床現場におけるエビデンス活用とは「アートとサイエンス」であるという面白い観点を持って議論を広げます。臨床で活躍できる治療家になるために、意識すべきマインドセットとは!?

【木村】今日はオーストラリア足病医のタリーシャ・リーブ先生と呉竹学園の紀平晃功先生に来ていただきまして、テーマは「エビデンスの臨床箇所のポイント」ということでお話をいただきたいと思います。

タリーシャ先生、紀平先生、よろしくお願いいたします!

優秀な治療家のマインドセットって何?

【紀平】 はい、タリーシャ先生、ランニングが好きなんですって?

【タリーシャ】 はい、ランニングは私の好きなスポーツなのですが、今はできないんです。

【紀平】実はこの間、先生が骨折されたって聞いたのですが…

【タリーシャ】はい、3~4週間は走れませんが、また始めたいと思ってますよ。

【紀平】ランニングが体にいいというエビデンスはたくさんあるじゃないですか。だからランニングをされているんですか?

【タリーシャ】 それが理由ではありません。文献を読んだり特定の話題について話したりすることで、私はランニングをより楽しむことができてると思います。そして、自分自身のためにも、それを自分のランニングに取り入れてみて治療を受けている患者がどのような感じになるかを実感しようとしています。

【紀平】 僕もランニングをするので、やっぱり同じような感じでやってるんですね。要するに、エビデンスがあるからやるわけじゃなくて、楽しいからやっている。そこにエビデンスを活用するっていうことが、臨床での展開と全く同じだと思うんですよ。

【タリーシャ】 はい、私は経験上、最も優れた治療家は自分自身で介入策を試し、実施したときに患者がどのように感じるかを知っている方たちだと思っています

臨床現場のエビデンス活用は「アートとサイエンス」

【紀平】 そういう意味では、今日のセミナーでもおっしゃってましたけど、アートとサイエンスの融合だということですよね。

【タリーシャ】 はい、私はエビデンスは科学だと思いますね。そして、私たちが関連する情報を取り込んでそれを患者に適用することこそが、アートなのではないでしょうか。

【紀平】 どうしても片側に寄ってしまう。つまり、アートだけに寄ってしまったり、サイエンスだけに寄ってしまったりする人が多いと思うんですけれども… その両方が大事だと思われたエピソードって何かあります?

【タリーシャ】 そうですね、たくさんの例が挙げられます。例えば、科学的な知識に過度に依存している例として、慢性疼痛患者を適切に治療することができない場合が挙げられます。

なぜなら慢性的な痛みの改善には患者と良い関係を築く必要があり、人間的なスキルを持たずに技術的なスキルばかり持っている治療家は、慢性疾患の患者に対して良い結果を得ることができないことが多いからです。

【紀平】 確かに、アートが必要だというサイエンスもありますよね。だから、「コミュニケーションが上手に取れることはすなわち治療である」と。

【タリーシャ】 おっしゃる通りです。実際、多くの文献で支持されています。一部の文献は40年前から存在していますが、実際には、ここ10年ほどでやっとその重要性が増し始めています。

【紀平】 そう考えると、本当に疾患を治療するのではなくて、人を治療するとタリーシャさんがおっしゃっていることに、僕は心から同意をします。

【紀平】さて、その上でこれまではコミュニケーション、あるいはアートが実はサイエンスの中に含まれているというお話だったんですが、話を完全にサイエンスの方に持ってくると、新しいエビデンスを知ることの喜び、楽しさっていうのもありますよね。

【タリーシャ】 とてもよくわかります!エビデンスに基づいた治療について情報を追い続ける治療家の多くは、それを面白いと感じるタイプの人ですよね。一方で、治療家の中には、読んだ内容に対して好意的ではなく、新しいやり方も受け入れがたく、治療方針を変更したくないという人もいます。

【紀平】 それはちょっと残念な話ですね… できるだけバイアスの少ない目で論文を読みたいなと思います。

【タリーシャ】 はい、賛成です。私も同様で、バイアスの可能性を認識することで、私たちはその潜在能力を持っていることに気づき、新しいことを学ぶことによりオープンな姿勢を持つことができると思ってます。

治療家自身の性格や個性も、このことに貢献するのではないかと思います。ですから一般的に、経験に対してオープンな人は、新しいエビデンスに対してオープンな治療家であることが多いですね。

【紀平】 そういう意味では、タリーシャさんはひょっとすると、小さな喜びを見つけるのが上手なのかもしれませんね。

【タリーシャ】 そうですね。私が幸せになるのに大きなものや派手なものは必要ありません。

【紀平】いやぁ、僕もそうですね。ビールを飲みながら新しい論文を読んでいることってすごく楽しいですよね!

【タリーシャ】ええ。私の場合は、犬と時間を過ごしながら論文を読んでますが(笑)

臨床現場のエビデンス活用:トップ2の注意点は?

【紀平】「新しいエビデンスを知ることが楽しい!」というタリーシャさんにお聞きしたいことがあります。

エビデンスを臨床に持ってくる時に、注意することはなんですか?

【タリーシャ】 おそらく、一番の注意点は盲目になってエビデンスに従いすぎないようにすること、ですね。担当している患者自身のことも、よく考えないといけないですから。

【紀平】 今おっしゃったことは、二つの要素を含んでましたね。まず、① 患者中心(patience centered) ということですね。もう一つは、② 批判的思考(critical thinking) ということですよね。

やはり、その二つを大切にして患者さんを中心にし、エビデンスを用いる。でも、そのエビデンスを信用しきらずにやっていくというところが大事なんですね。けど、それってかなりのトレーニングが必要なんじゃないですか?

【タリーシャ】 トレーニングという言葉の内容によりますが … 必ずしも多くのトレーニングが必要ではないと思います。なぜなら患者と接する臨床の方が、それよりも学びが多いからです。

本を読んで学べることは限られており、実際に多くの患者に試してそれがどのように機能するかを確認することで本当の意味での学びが得られるのです。

【紀平】 そういう意味では、一本一本の論文を自分で集めて全て読んで、患者中心に考えていくというのはすごく大変なことだと思うんですね。だからこそ、タリーシャさんの目を通してP3で学んでいくと、体系的に、そして網羅的に学ぶことができるんじゃないかなと思います。

P3(Progressive Podiatry Project)とは、特に運動療法に重点を置き、筋骨格系の病状の評価と管理に関する世界クラスの教育コンテンツを提供することを目的として 2019 年に設立されました。オーストラリア足病医、タリーシャ・リーブ先生が開発した「ポダイアトリスト(足病医)向け」教育コンテンツを学ぶことができます。

【タリーシャ】 そう願っています。P3全体のミッションは、治療家が個々の患者に対し、文献にあるエビデンスをどのように活用すればいいかを示すことです。

【紀平】 日本ではまだまだ受け身(passive) な治療、つまりマッサージをしたり物理療法を行ったりということが多いのです。これから運動療法が展開されていけば、きっとハッピーになる治療家も増えるし、患者も増えるんじゃないかなというふうに考えてます。

【タリーシャ】 そう思います!オーストラリアの医療現場が運動と活動の重要性をより重視する方向に進化しているのですが、そこには非常にポジティブな変化が見られています。なので、同じことが日本でも起こる自信があります。

【紀平】 そうなれば、最初、僕がタリーシャさんに聞いたみたいにランニングしたり、動いたりして元気を得る人がもっと増えてきそうですよね。

【タリーシャ】 そうなることを願っています。

【紀平】僕も願ってます!

最後に

【木村】お二人ありがとうございました!まさに知の格闘技というところで、僕は非常に楽しかったです。

紀平先生は治療エビデンス研究会をずっとやられております。また、足病医のタリーシャ先生が教えてくれるP3、運動療法に特化したプログラムもありますので、ぜひ確認してみてはいかがでしょうか?

ということでタリーシャ先生、紀平先生。今日はありがとうございました!

オーストラリア足病医学会公認「世界中の足病医が学ぶ治療法」

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講師紹介

タリーシャ・リーブ

日本足病学協会 理事

筋骨格系専門足病医(オーストラリア足病医学会所属)

B.App.Sc.(Podiatry) / 応用理学士(足病医)

Graduate Certificate in Clinical Rehabilitation

(臨床リハビリテーション修士)


オーストラリアで15年の臨床経験を持つ足病医。オーストラリア足病医学会(APodA)、イギリスのスポーツ医学界(BJSM)の両団体から世界初の承認を受けた、足病医向け教育プログラム[足病学臨床マスタープログラム]の開発者。世界29か国/8万5000人の会員組織を持つ国際足病医団体「FIP」公認の最大級イベント「Foot&Ankle Show」登壇者。オーストラリア足病医学会主催の足病医を対象とした臨床リハビリテーションワークショップツアーを豪州全域にて担当。2022年に行われた2回の来日実技セミナーでは全国から参加した50名超の参加者の満足度が10点満点中9.65点という大絶賛を受けた。

紀平 晃功

日本足病学協会 理事
呉竹学園東洋医学臨床研究所
東京医療専門学校 専任教員
修士(保健医療学)
JATI-ATI / 柔道整復師


柔道整復師や鍼灸師を養成する呉竹学園で教諭を務め、臨床治療/トレーナー活動/研究をしているトップエキスパート。トレーナーとしては、大学女子バスケ日本一チーム(全国6連覇)、社会人ラクロス日本一チームをサポートし、某競技オリンピック選手、日本トップクラスのトライアスロン選手もサポート中。スポーツ医科学総合誌『月刊スポーツメディスン』でエビデンス活用の連載も担当している。呉竹学園での教育/臨床の傍ら、法政大学大学院にて博士後期課程で研究に従事。精査したスポーツ医科学論文数は1500以上。累計1万本以上を読み込んでいる。2022年には、オーストラリア足病医 タリーシャ・リーブ先生の足病学臨床マスタープログラムを監訳・監修し、海外足病医の知見を、多くの日本の治療家へ伝えている。

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