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高齢患者のための運動療法の重要性

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病気や怪我による安静・固定期間は、加齢による筋骨格組織の構造と全体的な機能耐性に対する悪影響を強める可能性があります。

多くの足病師(ポダイアトリスト)に当てはまると思いますが、私たちのような臨床家は高齢患者と定期的に接触するゆえ、より活動的かつ健やかに年を重ねるための大きな変化をもたらすことができるというユニークな立ち位置にいると言えます。

運動療法について考えるとき、怪我をしたのちスポーツ活動に復帰したいと考えるアスリートや活動的な個人が浮かぶことがよくあります。
この際、比較的活動的ではない高齢者が最初に思い浮かぶことは少ないでしょう。

しかし、この高齢患者こそが、身体リハビリや機能回復がより重要となるケースです。
臨床家として安静・固定期間が長期的な機能耐性および全体的な生活の質に与える影響を考えるとき、特に欠かせなくなってきます。

耐性の差

私たちの思考がこのプロセスを辿る一つの理由は、耐性の差にあります。

怪我をして再び高パフォーマンスの活動に復帰したい非常に活動的なスポーツ選手が患者の場合、耐性の差は非常に明白です。
このような個人が安全にスポーツに復帰するためには、ある程度の理学療法が必要であり、機能耐性を回復する必要があることは理解に容易いでしょう。

一方、比較的座りがちな高齢者が患者の場合、長引く怪我から日常生活に復帰するだけであれば、耐性の差が明確でないため、理学療法や機能回復の重要性を軽視してしまうことがあります。

高齢患者、特に比較的座りがちな高齢者にとって、短期間の安静や固定でも機能耐性や生活の質に深刻な影響を与えることがあります。
これは主に老化現象が増幅されるためです。

老化とともに何が起きる?

人間の神経-筋システムの健康的な老化は、筋肉の萎縮、筋力の低下、動作の鈍化といった変化を伴いますが、それだけではありません。
筋サイズや筋力の減少は老化だけでは説明できず、栄養摂取量や身体活動の減少も、筋肉や組織の質や機能の低下に大きく影響を与えています。

骨格筋の「質」とは、筋肉の組成や細胞の構造・配置に加え、ホルモン調節や免疫機能にも影響を与える能力を指します。

細胞の構造と組織の成り立ちの観点から、老化した骨格筋や腱は弾力性が低下し、コラーゲンの結びつきが変化して、組織の硬さやコンプライアンスに影響を与えます。
また、骨格筋には脂肪やコラーゲンが蓄積されます。
これらの変化が、筋肉組織の質と前述の機能に作用するのです。

老化や骨格筋に関してよく使われる用語として、サルコペニアとダイナペニアの2つがあります。

サルコペニアとは、加齢に伴う筋肉量の減少を指します。70歳を過ぎると、骨格筋の筋肉量は毎年最大1%減少すると言われています (Walston, 2014)。

一方ダイナペニアとは、神経疾患や筋疾患によるものではない、加齢に伴う筋力の低下を指します。
70歳までに筋力は10〜15%減少すると言われており、70歳を過ぎると、この減少は加速し、10年で25〜40%に達するとされています (Clark & Manini, 2012)。

神経学的な観点で考えると、脊髄の運動ニューロン出力が低下し、モーターユニットの放電率(MUDRs)が下がり、筋小胞体の機能が低下することで、筋肉の収縮速度が遅くなり、骨格筋の収縮力が弱まります。

これらの前述の変化はすべて自然なものであり、「歳を重ねることによって得られるちょっとした贈り物」と言えるでしょう。
しかし、不使用や安静、固定は、これらの変化を大きく進行させ、健康寿命や生活の質(QOL)に大きな影響を与えることになります。

寿命 vs 健康寿命

寿命とは、私たちが生き続ける総年数のことです。
健康寿命とは、その年数のうち、病気がなく健康でいられる期間のことです。

機械的な負荷軽減

ベッドでの安静、固定、下肢の負荷軽減(例えば術後のシューズやムーンブーツ)、または単に1日の歩数が減少するだけでも、加齢による筋肉の構造と機能に対する悪影響を増幅させます。

筋肉に負荷がかからない期間が、どれほど速く筋断面積(mCSA)や体積、力の生成能力に影響を与えるかは忘れがちです。

たった5日間の固定でさえ、膝伸展筋の筋断面積(mCSA)が4%減少し、筋力が9%低下します。
Gaoらの報告によると、長期間にわたる筋肉への負荷がない状態では、84日間のベッド安静で外側広筋の体積が17%減少し、機能は40%も低下したと言われています。

年齢による機械的な負荷軽減の影響

筋肉サイズ(体積/mCSA)の減少は、若年層の方が高齢層よりも顕著に見られます。
これは、若年層では筋タンパク質合成(MPS)が活発で、加齢とともにMPSが弱まるからだと考えられます。

一方で、力の生成能力の低下は高齢層の方が若年層よりも顕著です。
これは、神経の興奮収縮連関が低下し、筋繊維の一部が神経支配されなくなる、そして筋小胞体が劣化することが原因だとされています。
そのため、骨格筋の適応能力(可塑性)が若年層と高齢層で異なってくるのです。

臨床ではどのように見られるでしょうか?

6〜8週間ムーンブーツを装着した若者の場合、装着しなかった側のふくらはぎと比べて筋の周径に顕著な差が見られることがあります。
これは、若者の高い筋タンパク質合成が、固定期間中(+/- 栄養や生活習慣の影響)に弱まるためです。
若者は力の生成能力の低下も経験するかもしれませんが、短期間のリハビリで回復する可能性があります。

一方、加齢に伴って筋タンパク質合成/分解の速度が自然に低下している高齢者の場合、ふくらはぎの萎縮は少ないかもしれません。
しかし、力の生成能力には大きく影響が出るため、固定前の状態に戻るのは難しいことが予想されます。

これらの違いに加えて、高齢者の耐性差が小さいことから、安静・固定期間後や機械的な負荷軽減後の運動プログラムが、機能の改善や回復に必要ないという考えに臨床家は簡単に至ってしまうかもしれません。

さらに、このケースでは、高齢者の機能回復には以前考えられていた以上に注意を払う必要があります。
というのも、足関節底屈筋群に起こる神経-筋の変化が、高齢者の転倒リスクに非常に重要な役割を果たすからです。
筋力の低下、歩行やバランスの障害は転倒の内因性リスク要因とされ、高齢者では特に転倒リスクが高くなります。
そのため、足関節底屈筋群の筋力は、高齢者の機能低下を予測する重要な指標とされています (André et al, 2016)。

これは悪いことばかりではありません。
運動や動作次第では、それに応じて骨格筋に目に見える変化が起こり、高齢者であったとしても機能の改善や回復が期待できます。

予防的に対応するのか、問題が起きてから対応するのか

私たちの医療システムは、いまだに予防的な対応というよりは事後対応であると言えます。つまり、問題が発生してから対処することが多いのです。

もっと予防的な対応に取り組むことで、患者の健康寿命を向上させるだけでなく、怪我、病気、または手術が日常生活の機能に与える影響の程度と期間を抑えることができます。

臨床実践においては、高齢者が健康で活動的に年を重ねるために取り入れられる戦略がいくつかあります。
これには以下のような方法が含まれます:

– ヘルスチェック/モニタリング – 多くのクライアントに年1回の神経血管検査を行っていますが、運動機能評価も行うべきではないでしょうか?

– 術前・術後評価 – たとえ患者を軽微な手術(例えば、外反母趾の矯正や小趾の手術)のために紹介する場合でも、患者を手術前に評価することは、術前計画や術後管理に非常に役立ちます。

– 怪我や固定後の評価 – 患者が病気や怪我によって活動が減少していた場合、年齢に応じた運動機能評価を行い、その能力を評価することが重要です(または、年1回の運動機能評価を行っている場合は、既存の測定結果を活用)。

もちろん、身体機能評価を実施することは私たちの業務範囲を超えるとは思いませんし、高齢者の機能的な能力を改善するために、足病師が対応する患者にシンプルな運動プログラムを処方することが設備的に難しいことではないと信じています。

参考文献

Brook, M., Wilkinson, D., Phillips, B., Perez-Schindler, J., Philp, A., Smith, K., & Atherton, P. (2015). Skeletal muscle homeostasis and plasticity in youth and ageing: impact of nutrition and exercise. Acta Physiologica, 216(1), 15-41. doi: 10.1111/apha.12532

Clark BC, Manini TM. What is dynapenia? Nutrition. 2012 May;28(5):495-503. doi: 10.1016/j.nut.2011.12.002. PMID: 22469110; PMCID: PMC3571692.

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Gao, Y., Arfat, Y., Wang, H., & Goswami, N. (2018). Muscle Atrophy Induced by Mechanical Unloading: Mechanisms and Potential Countermeasures. Frontiers In Physiology, 9. doi: 10.3389/fphys.2018.00235

Helô-Isa André, Filomena Carnide, Edgar Borja, Fátima Ramalho, Rita Santos-Rocha & António P Veloso (2016) Calf-raise senior: a new test for assessment of plantar flexor muscle strength in older adults: protocol, validity, and reliability, Clinical Interventions in Aging, 11:, 1661-1674, DOI: 10.2147/CIA.S115304

Siparsky, P., Kirkendall, D., & Garrett, W. (2013). Muscle Changes in Aging. Sports Health: A Multidisciplinary Approach, 6(1), 36-40. doi: 10.1177/1941738113502296

Suetta, C., Hvid, L., Justesen, L., Christensen, U., Neergaard, K., & Simonsen, L. et al. (2009). Effects of aging on human skeletal muscle after immobilization and retraining. Journal Of Applied Physiology, 107(4), 1172-1180. doi: 10.1152/japplphysiol.00290.2009

Walston JD. Sarcopenia in older adults. Curr Opin Rheumatol. 2012 Nov;24(6):623-7. doi: 10.1097/BOR.0b013e328358d59b. PMID: 22955023; PMCID: PMC4066461.

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