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「治療費の話」にためらわないために

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相手を気にしすぎることで、治療の結果を台無しにしてしまうことがあります。

治療費について患者と話すことに抵抗を感じているなら、知らず知らずのうちにケアの質に悪影響を与えているかもしれません。

話しづらいテーマに慣れることで、ケアの質をより高めることができます。

誰もが平等に医療を受けられるようになり、最高のケアが経済的余裕のある人だけのものでなくなることを心から願い、可能であれば無料で働きたいと思う者として、私はこれを言っています。

治療費に関する患者の立場を勝手に推測したことで、それが結果的に最善の治療方針に対する認識に悪影響を及ぼしていることに気づき、その心構えを変える必要があると認識していたものの、どこから始めればいいのか分からなかった私が、多くのメンターやコーチ、専門家に指導を受けてきた立場としてお話しさせてください。

私たちを優れた臨床家たらしめる共感や思いやり、他人を助けたいという純粋な気持ちが、最善のケアを提供する力を妨げてしまうことがあります。

私たちがそれぞれ異なる文化や社会経済的背景を持つ地域で働いていることは理解しています。そのため、万人に当てはまるアドバイスや視点はないかもしれませんが、この内容が「罪悪感を持ってしまう」という方への助けとなれば嬉しいです。

臨床家Aの態度や説明の仕方に自信が感じられないため、患者はその提案を信頼性に欠ける、または重要ではないと受け取る可能性があります。

臨床家の戸惑いや緊張を患者が感じ取り、それによって治療そのものにも不安や疑問を抱いてしまうかもしれません。

臨床家Bは、思いやりや配慮を持ちながらも、治療費が提案への自信に影響を与えることはありません。

自信に満ちた率直なアプローチ、明快な解説、そして患者の目標と治療の目的を関連付けることで、追加費用が必要であっても治療を勧める理由を納得してもらえる機会を提供しています。

人は無意識のうちに、言葉遣いや態度など、多くの行動要素を感じ取り、それに応じて反応しています。たとえ自分で気づいていなくても、それらを観察し反応しているものです。

今日はこの部分に注目していきたいと思います。

両刃の剣

医療従事者としての私たちの主な役割と目標は、患者の健康と福祉を向上させる質の高い倫理的なケアを提供することです。患者への提案はエビデンスに基づいた実践に裏打ちされ、最適な健康状態を実現したいという願いに突き動かされています。

しかし、共感や思いやり、社会正義への意識といった仕事において優れた成果をもたらす多くの要素が実際には最善のケアを妨げる要因になり得ることがあります。

追加費用や自己負担について話すときに感じる不安が、無意識のうちに私たちの態度に現れ、それが患者の印象を変え、ひいては提供できるケアにも影響を与えかねません。

提案した治療の追加費用を患者が負担できないかもしれない、という思い込みに基づく罪悪感が、自信を損なう主な感情要因の一つになり得るのです。

この治療を提案することで患者に経済的な負担をかけたり、「押し売り」と思われたりするのではないかと不安になることがあります。

これらの不安は善意から出たものかもしれませんが、多くの場合、患者の実際の経済状況ではなく、自分自身の先入観に基づいていることが多いのです。

確かに、私は消費者行動や心理学の専門家ではありません。しかし、他者の助言を仰ぎ、自分自身の信念や行動に向き合うことで、より自信を持った臨床家として、より良いケアを提供できるようになったと感じています。

自分の『思い込み』を患者に投影していないか?

自分が無意識のうちにそうしていないかを見直すために、以下の質問を自分に問いかけてみてください。

頻繁にそうしているなら、患者さんの経済力について先入観を持っている可能性があります。

もし答えが「はい」なのであれば、その感情はあなた自身の思い込みから来ているのかもしれません。

そう感じることがあるなら、それは思い込みが治療提案に影響を与えているサインかもしれません。

もしそうなら、あなたの先入観や価値観が治療の話し方に影響しているかもしれません。

そうした思い込みが、あなたの治療提案の内容や伝え方に影響を及ぼしているかもしれません。

そうでない場合、患者が払える・払えないという判断を、あなた自身がしてしまっているかもしれません。

実際の臨床では、価格に対する敏感さが重要になる場面も確かにありますが、私たち自身の思い込みや日頃の判断パターンを見直すことも、とても大切なことです。

質の高いケアへの影響

認識や期待が治療結果に大きな影響を与えることは、よく知られています。

私たちが自信のなさや迷いを見せてしまうと、知らず知らずのうちに提供するケアの質に悪影響を与えている可能性があります。

表情や態度に出てしまう不安感は、患者との関係性に影響を及ぼし、私たちの専門性や治療提案への信頼さえも損ねてしまうことがあります。

さらに、私たちの行動が患者の治療に対する印象や効果の感じ方に影響し、結果的にコストに配慮するあまり、患者の選択肢を無意識のうちに狭めてしまうこともあります。

医療従事者として、自信はとても大切な要素です。

自信を育てるために

思考や行動を変えるための第一歩は、自分自身を知ることです。

前半では、自分自身の思い込みや先入観 — たとえば「費用に対する敏感さ」— が患者との関わり方に影響していないかを振り返るための質問を紹介しました。

ここからは、もし費用に対する敏感さが自分の臨床に影響していると感じるなら、それを乗り越えるための具体的なアプローチを見ていきましょう。

思い込みを手放す

治療するのは「患者の身体」であって、「財布の中身」ではないということを、忘れないようにしましょう。

また、治療法を決めるのは患者自身であり、私たちはそのための選択肢を提供する立場です。

患者さんの病態や目標に対して、治療介入がどのような役割を果たすのか、期待される効果は何かを丁寧に伝えた上で、費用についても正直に説明します。

治療内容と費用をしっかりと説明したあとで、必要に応じて支払いの相談をしていくこともできます。

一見あたり前のことのように思えるかもしれませんが、これを日々意識し続けることが、考え方を変える第一歩になります。

選択肢を提示する

足病診療において、足底板と靴は費用がかかる治療手段の代表であり、特に両方を併用する提案をする場合には、費用がかさむことがあります。

新しい靴に加えて足底板を処方すると、合計で700ドルを超えることもあり、クリニックの立地や料金設定によってはさらに高額になることもあります。

以前、私がクリニックを経営していた場所は、中〜低所得層の多い地域でした。
そのため、カスタムメイドや既製の足底板について、分割払いのプランを用意していました。

この仕組みによって、経済的なハードルが下がり、多くの患者さんにとって治療を受けやすくなる、というメリットが生まれました。
一方で、費用の回収ができないリスクを自分が負うことになるというデメリットもありました。

ただし、足底板のスキャンを送る前や既製品を渡す前には頭金をいただくようにし、万が一支払いが滞っても最低限のコストが補えるようにしていました。

実際に損をしたことも……ありました。

7年間の中で、残額の支払いがされなかったケースは2件ほど記憶しています。

もちろん、未回収になるのは望ましくありませんし、経費の支払いもあるので簡単な話ではありませんが、それで眠れない、というような深刻な問題ではありませんでした。

このほかにも、分割払いの支払いが止まってしまったケースが5〜6件ほどあったかと思います。

しかし、契約に基づいて「このまま未払いが続く場合は債権回収会社に委託する」と書いた通知を送ったところ、ほとんどのケースで支払いがすぐに再開されました。

もし再びクリニックを開業するとしても、また分割払いのプランは提供するでしょう。

未払いの追跡や収入への影響がストレスになるのは確かですが、それ以上に多くの人にとって支えとなり、自分自身の中にあった複雑な感情との向き合いにもつながったと思います。

こうした回収業務を代行してくれる外部の金融サービスも存在します。

治療費に対する回収代行サービスのコストを考慮したうえで、最終的にはそのリスクを自分で引き受ける選択を取りました。

コミュニケーションを意識する

費用について話すときは、誠実さと共感を持ちつつも、表情や態度では中立的であることを意識しましょう(それが患者の受け取り方に影響を与えることを忘れずに)。

治療介入が果たす役割を明確に伝え、患者の目標と治療の目的をしっかり結びつけて説明しましょう(詳細はこちら)。

患者のために最善を尽くしたいと願う臨床家として、抱える感情が複雑になることもあると思います。

ですが、「費用とケア」の関係性をどう捉えるかを少し見直し、中立的な立場で必要な情報をすべて伝えることが、むしろケアの質を高めることにつながると考えられます。

今回も、皆さんの臨床の現場に少しでも役立つヒントや考え方をご提供できていたら嬉しく思います。

もしこの内容が少しでも参考になったと思ったら、同じような志を持つ仲間や同僚とぜひシェアしてもらえると嬉しいです。

目次

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