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職場のギクシャクを解決する会話術

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「難しい会話」はどの職場でも避けられませんが、特に医療の臨床現場では、職場環境が親密であるがゆえに、同僚との関係が深くなりより発生しやすいものです。

人事評価、業務管理計画の導入、採用や解雇の決定など、これらの会話をうまく進めることは、職場での信頼関係を維持し、健康的な職場環境を推進し、そしてクリニックを円滑に運営を支える上で欠かせません。

今回のブログでは、職場での難しい会話に臨む際に自信と思いやりをもって対処するための実践的なヒント、戦略、および参考資料を紹介したいと思います。

難しい会話は、利害が対立している、リスクが高い、感情が高ぶっている、といった場面で発生することがよくあります(1)※カッコ内番号は下記の引用文献。関係を損なうことへの恐れや対立への不安、自分のコミュニケーション能力への自信のなさなどが、会話をより困難にする要因となります。

前述したように、医療現場ではこのような会話が特に難しくなる傾向があります。中でも、個人開業のクリニックなど従業員が1〜2人しか居ないような少人数の環境では、職場の親密さが会話の難しさに拍車をかけることがあるでしょう。

興味深いことに、職場で「この会話は難しい」と思い込むこと自体が、自己暗示のように働くことがあります。「これは難しい会話になる」と最初から決めつけて臨むと、その先入観や不安がかえって火に油を注ぎ、もともと問題なかった会話を「難しい」ものにしてしまうことがあるのです。

私は人事の専門家ではありませんが、労災補償分野で働き、非常に対立の激しい困難な会話を毎週のように扱ってきました。また、さまざまな規模の組織で働き、雇用主として難しい会話の多面的な側面に向き合ってきた経験から、職場で「苦手な会話」に臨む際に役立つであろういくつかの気付きをお伝えできると思います。

難しい会話を円滑に進めるためのコツと戦略

スケジュールを活用する

ベストな会話を交わすには、双方が冷静に受け答えできる状況を作ることが大切です。可能であれば、事前にミーティングをスケジューリングしておくことで、感情や反応に引きずられるのを防げます。どちらかが受け身の状態で臨むと、生産的な話し合いにならない可能性が高いのです。

相手の立場への配慮も大切です。会話の前には誰でも不安が高まりやすく、人は物事を悲観的に捉えがちです(特に不安を感じやすい人は最悪のシナリオを想定しがちです)。可能であれば、話したい内容についての簡単な概要を事前に伝えておくと良いでしょう。

例えば、昇給について上司に相談したい場合、単に「お話ししたいことがあります」とだけ伝えると、上司は「退職の話かもしれない」と心配してしまうかもしれません。

代わりに、ミーティングを依頼する際は以下のような表現が使えます:
「現在、自分のキャリア目標や自身の成長について考えているところで、ご意見をお伺いできたらと思っています。つきましては、ミーティングのお時間を取っていただけないでしょうか?また、クリニック内での私の働きぶりや貢献についてもフィードバックをいただきつつ、目標の見直しができればと考えています。よろしくお願いいたします。」
(もちろん、あくまで一例なので、ご自身の言葉で表現してください。)

一方で、従業員の仕事ぶりについて懸念があり、それについて話したい場合に、ただ「ミーティングが必要です」とだけ伝えると、相手は「解雇されるのでは?」と不安になってしまうかもしれません。特に、普段からあまり定期的な確認や評価面談を行わない職場の場合、なおさらそうした不安が強まりやすいでしょう。

この場合、例えば以下のような内容のメール表現が使えるでしょう:
「しばらくしっかりとお話しできていなかったので、一度お話しできればと思います。クリニックでの業務についてどのように感じているか、また、フィードバックや提案があれば、ぜひお聞かせください。あるいは、サポートが必要なことがあれば、その点についても一緒に話し合えればと思ってます。」
(繰り返しにはなりますが、こちらも一例なのでご自身の言葉に置き換えてください。)

こうした提案をする理由は、この種の会話が一方通行であってはいけないからです。昇給、契約、業務評価など、職場でよく話し合われる内容は、多くの場合双方の意見を尊重しながら進める必要があります。

ではミーティングを設定した後、次に進むべきステップは何でしょうか?

話し合いに備える

・まずは話し合いの目的を明確にし、望む結果を把握しておくことが大切です。要するに、「この対話を通じて何を達成したいのか」をしっかりと整理しておきましょう。

・会話のための時間をしっかりと確保し、診療の合間や昼休みの終わりに慌ただしくすませようとせず、きちんとスケジュールを組みましょう。「予定」として入れないと、双方にとって建設的な会話が難しくなる可能性があります。

・会話に臨む前に、自分の考えや気持ち、必要な情報を整理する時間を取りましょう(2)。もし診察や交通状況の都合で遅れで焦っている場合でも、30秒だけ深呼吸をして気持ちを落ち着かせるだけで、会話がずっとスムーズになることがあります。

・会話は自分だけのためのものではなく、相手にも影響を与えます。相手の立場や気持ちを意識し、いきなり話を切り出して驚かせることのないように注意しましょう。

安心して話せる環境を整える

・会話はプライバシーが確保された落ち着いた場所で行いましょう。周囲の視線や盗み聞きのリスクがあってはなかなか良い話ができません。

・会話を始める際は、目的を明確に伝え、問題を解決することの重要性を強調しましょう(3)。そのためにも、a)事前にミーティングを依頼し、あらかじめ話したい内容の一部を共有しておくと良いでしょう。これにより、双方がミーティングの目的を理解しやすくなります。また、b)事前準備をしておくことで、会話に集中しやすくなります。

積極的に相手の話を聞き、共感を持って話す

対人スキルは、習得が難しいスキルのひとつです。自然にできる人もいれば、なかなか身につかない人もいます。

・相手の話に注力し、途中で遮ったり決めつけたりせずに、相手の不安や懸念に耳を傾けましょう。

・リフレクティブ・リスニング(反映的傾聴)は、特に感情が高まりやすい会話において、建設的で意味のある対話を促す優れた手法です。

・相手の気持ちをしっかり認め、その視点を尊重することで、共感を示しましょう (4)。対立しがちな会話では難しいこともありますが、どんな状況であれ、お互いに最善の結果を求めているということを忘れずに臨むことが大切です。

・会話中は落ち着いて、冷静かつプロフェッショナルな姿勢を保つことを意識しましょう。自分が感情的になりやすいポイント(トリガー)を把握しておくと、冷静さを維持しやすくなります。

・会話では議題に集中し、個人的な批判や無関係な話題に逸れないように注意しましょう。話が脱線しそうなときは、事前にチェックリストを用意しておくと、軌道修正しやすくなります。

・相手が感情的になる可能性を考慮し、共感を持ちつつ冷静に対応できるよう準備しておきましょう (5)。

・相手が過度に動揺したり感情的になった場合は少し時間を取って落ち着くのも一つの方法です。お互いに冷静さを取り戻した後、改めて会話を続けましょう。

自分の中の「トリガー」を理解する

あまり話題に上がることはありませんが、私にとってこれは非常に重要なポイントです。

不快な会話の際に、自分のボディーランゲージや振る舞いを意識することで、会話を建設的に進めるか、それとも完全にこじれさせてしまうかを大きく左右できるようになるでしょう。

ここでいう「トリガー」とは、会話の中で自分が苛立ったり、フラストレーションを感じたり、挑発されるように感じる要因のことです。それを超えて大切なのは、「トリガーが作動したとき、自分の体がどのように反応するか」を理解することです。

私自身の例を挙げると、話を遮られたり、割り込まれたりすると、強い苛立ちを感じます。攻撃的になるわけではありませんが、普段は協調的な性格でも、急に頑固で譲らない態度になってしまいます。

私が協調性を失い始めるサインとして、まず「耳が熱くなる」、そして「相手の話がほとんど頭に入らなくなる」ことがあります。

こうした状態を防ぐために、私はリフレクティブ・リスニング(反映的傾聴)を意識的に取り入れるようにしています。

「つまり、あなたが伝えたいのは______ということでしょうか?」

「私の理解では______ということになりますが、これで合っていますか?」

礼儀を忘れないこと

特別なアドバイスではないかもしれませんが、実は最も大切なことです。

職場での対立や話し合いにおいて、やってはいけないことがいくつかあると思います(私のいち意見ですが)。

・相手を不意打ちにしないこと。診察室に突然押しかけ、怒りをぶつけるような行為は、どんな話題であれ相手への敬意を欠くだけでなく、ハラスメントに近い行動になりかねません。

・話を遮らないこと。解決が必要な会話(ここで取り上げているほぼすべての会話、解雇の話も含む)では、相手に話す機会をしっかりと与えることが大切です。

・「口は災いの元」。従業員や雇用主との会話は、機密情報として扱い、他のクリニックスタッフやオフィス内で共有しないことが重要です。機密保持が守られないと、職場環境が悪化し、職場の雰囲気がギスギスするだけでなく、従業員の精神的・感情的な健康にも悪影響を与える可能性があります。

職場での難しい会話は、避けられるなら避けたいものですが、キャリアのさまざまな局面で必ず必要になるものです。そして、それをより良く進めるスキルは常に磨いていくべきものでもあります。

こうした会話を上手に進められるようになれば、職場の人間関係が良好になり、健全な職場環境が促進され、クリニックの運営もスムーズになります。

この記事が、職場での困難な状況にどう対処し、よりスムーズに乗り越えるためのヒントとなり、不必要な不安を減らし、健全な職場関係を築く一助になれば幸いです。

参考資料・更なる学習のためのリソース

  1. “Crucial Conversations: Tools for Talking When Stakes Are High” by Patterson, Grenny, McMillan, and Switzler
    難しい会話をうまく進めるための実践的なアドバイスを提供するベストセラー書籍 (7)。

2.”Difficult Conversations: How to Discuss What Matters Most” by Stone, Patton, and Heen
対立を伴う会話の理解と効果的な進め方を解説した包括的なガイド (8)。

  1. Harvard Business Review
    職場での難しい会話や対立解決に関するさまざまな記事やリソースを提供 (9)。

参考文献

  1. Stone, D., Patton, B., & Heen, S. (2010). Difficult Conversations: How to Discuss What Matters Most. Penguin Books.
  2. Patterson, K., Grenny, J., McMillan, R., & Switzler, A. (2011). Crucial Conversations: Tools for Talking When Stakes Are High. McGraw-Hill Education.
  3. Goulston, M. (2015). Just Listen: Discover the Secret to Getting Through to Absolutely Anyone. Amacom.
  4. Riggio, R. E. (2017). Listening and empathy in multicultural communication.
  5. Porath, C. (2016). Mastering Civility: A Manifesto for the Workplace. Grand Central Publishing.
  6. Kabat-Zinn, J. (2013). Full Catastrophe Living (Revised Edition): Using the Wisdom of Your Body and Mind to Face Stress, Pain, and Illness. Bantam.
  7. Patterson, K., Grenny, J., McMillan, R., & Switzler, A. (2011). Crucial Conversations: Tools for Talking When Stakes Are High. McGraw-Hill Education.
  8. Stone, D., Patton, B., & Heen, S. (2010). Difficult Conversations: How to Discuss What Matters Most. Penguin Books.
  9. Knight, R. (2015). How to Handle Difficult Conversations at Work. Retrieved from https://hbr.org/2015/01/how-to-handle-difficult-conversations-at-work

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