こんにちはPTタイガーです!
今回は、慢性的な足部の疼痛の原因となる「足根洞症候群」についてです。
では、慢性的な足部の疼痛の可能性となりえる疾患を考えてみてください。
いくつ挙げられるでしょうか?
・足底腱膜炎
・モートン神経腫
・外反母趾
・関節リウマチ
・変形性関節症
・足根管症候群
・末梢動脈疾患
など、ここら辺がメジャーな疾患でしょうか。
足根洞症候群は、もしかしたらあまり聞きなれない用語かもしれません。
さらに「足根管症候群」という一文字違いの用語もありますよね。
足根管症候群については、以前書いた記事があるので、こちらもぜひ読んでみてください!
なぜ足根洞症候群を知る必要があるのか
それでは、なぜ私たち臨床家は足根洞症候群を知る必要があるのでしょうか?
それは足根洞症候群は見逃されやすいからです。
非特異的な症状
足根洞症候群は、足部外側の痛みや不安定感といった非特異的な症状を呈し、足関節捻挫後の痛みや他の疾患(例えば腱障害、関節炎)と混同されやすい。
適切な治療が遅れるリスク
見逃されると慢性的な痛みや足部の機能障害が続き、患者のスポーツ復帰や日常生活への支障が長期化します。
なので、もし患者さんの訴えに対して、原因がわからず、曖昧な対応をしていたらどうでしょうか?
当然、症状は良くならなですよね。
やっぱり、患者さんの訴えから、「疾患の可能性をいくつ引き出しとして持っているのか」というのは臨床家にとって大切なことだと思います。
それでは、ここから足根洞症候群について解説していきます。
解剖学的な部分が複雑なので、イラストと動画を見ながら覚えていきましょう。
足根洞症候群とは?
足根洞症候群 (STS) は、足根洞の外側開口部周辺の痛みとして定義され、後足部の不安定感を伴うこともあります。
しかし、この定義は広範かつ非特異的であり、足根洞の痛みを引き起こす特定の原因となる病態を特定することが重要であると言われています。
解剖学的背景
足根洞は、距骨と踵骨の間にあるトンネル状の空間で、足首の安定性と固有受容感覚に寄与する多くの構造物を含んでいます。
- 距骨下関節: 距骨と踵骨の間の関節で、前、中、後の3つの関節面から構成されています。これらの関節面の構造のバリエーションが、距踵関節の安定性に影響を与えます。
- 靭帯: 距骨下関節は、関節の外側をつなぐ靭帯(踵腓靭帯、三角靭帯)と関節内に存在する内側靭帯(骨間距踵靭帯、頸靭帯など)によって支持されています。また、下伸筋支帯も関節の安定化に寄与しています。
- 神経: 足根洞は、脛骨神経、深腓骨神経、浅腓骨神経によって神経支配されています。
深腓骨神経の枝が足根洞を支配することが多いですが、腓腹神経の支配も関与している場合があります。 - 受容器:豊富な自由神経終末とパチニ小体、ルフィニ小体、ゴルジ様終末が存在している。
- 血管: 足根洞には、足の外側から起始する様々な動脈の吻合によって形成される足根洞動脈が存在します。
発生要因とリスクファクター
足根洞症候群の発生要因は多岐にわたり、外傷性、非外傷性、構造的な要因などが考えられます。
- 外傷: 外側足関節捻挫や繰り返しの足関節捻挫は、足根洞症候群の最も一般的な原因です。
これらの外傷により、足根洞内の靭帯(骨間距踵靭帯、頸靭帯など)が損傷し、炎症や滑膜炎が生じることがあります。 - 過剰回内: 扁平足や過剰回内足の人は、足根洞に圧迫力がかかりやすく、足根洞症候群を発症するリスクが高くなります。
- 解剖学的バリエーション: 距骨外側突起の解剖学的バリエーションは、足根洞のインピンジメントを引き起こし、の原因となることがあります。
症状と患者の訴え
STSの主な症状は、足根洞部の痛みです。
- 痛みの部位: 外くるぶしの前下方
- 痛みの増悪: 立位、歩行、特に不安定な地面での歩行、足の回内・内転運動時。
- その他の症状: 後足部の不安定感、腫れ、圧痛
診断方法
STSの診断は、病歴、身体診察、画像検査などを総合的に判断して行われます。
私は理学療法士なので、診断することはありません。
なので、もし、足根洞症候群が疑われる症状を患者さんが訴えている場合は、身体的な評価をした上で、医師に相談しましょう。
- 病歴: 足関節捻挫の既往、痛みの部位、増悪因子などを確認します。
- 身体診察:
- 視診: 後足部の腫脹、発赤、変形などを観察します。
- 触診: 足根洞部に圧痛があるかどうかを確認します。
- 運動検査: 足関節の可動域制限、距骨下関節の不安定性などを評価します。
特に、底屈と回外の組み合わせで痛みが増強する場合は足根洞症候群の特徴的な徴候です。 - 画像検査:
- レントゲン: 骨折、関節の変形などを評価します。
- MRI: 足根洞内の靭帯、滑膜、軟部組織の状態を詳細に評価できます。
- CT: 骨病変の評価に有用です。
- 足根洞ブロック: 局所麻酔薬を足根洞に注射し、痛みが軽減すればSTSの診断が確定します。
治療
足根洞症候群の治療は、保存療法と手術療法に分けられます。
手術療法の場合は、主に保存療法で効果が出ない場合や、靭帯断裂が明らかにある場合に適応となります。
ここでは保存療法に絞ってお伝えします。
- 安静: 痛みが強い場合は、患部を安静にします。
- 薬物療法: 非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs) やステロイド注射などにより、痛みや炎症を抑えます。
- 理学療法:
関節モビライゼーション: 足関節、距骨下関節の可動域を改善します。
筋力強化: 腓骨筋、足底屈筋などの筋力強化を行います。
固有受容感覚訓練: バランス能力、運動制御能力を向上させます。 - サポーター、テーピング: 足関節の安定性を高めます。
- インソール: 足のアーチをサポートし、足根洞への負担を軽減します。
外側捻挫に準じたプログラムですが、不安定性が強い場合には、筋力強化と合わせて固有需要感覚訓練がおすすめです。
まとめ
いかがだったでしょうか?
普段よく遭遇する疾患ではないからこそ、知っておく必要があると思います。
距骨下関節の解剖はやや複雑なので、動画を繰り返し見てイメージをつけていただくと良いと思います。
他の関節部分についても3Dのイメージで学びたい方はこちらもお勧めです!
足部の関節、靭帯、筋についてアニメーションで解説しています。
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最後までお読みいただきありがとうございました!
参考文献
Willegger, M. The Evolution of Sinus Tarsi Syndrome—What Is the Underlying Pathology?—A Critical Review. J. Clin. Med. (2023)