臨床家は、治療のための運動処方において、損傷した組織にどのように負荷をかけるか悩むことがよくあります。
運動の選択は一見簡単そうに思えるかもしれませんが、運動処方に不慣れな臨床家や経験の少ない臨床家にとって、負傷した患者を目の前に「どこから始めればよいのか」と迷うことは、とても不安な経験となり得るでしょう。
今回の記事では、リハビリプログラムに適した運動を特定するためのプロセスを簡略化し、自信を高めるアプローチを一つ探ってみましょう。
ここでのキーワードは「機能」です。
治療のための運動処方は、治療目標に基づいています。
治療目標の簡単なおさらいはこちらから
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組織の機能 → 治療目標
治癒中の組織が動きを必要とすることは臨床家誰もが知っています。しかし、具体的にはどのような動きが必要なのでしょうか?
治療のための運動療法を成功に導くコツはさまざまですが、特に運動処方の経験が少ない臨床家にとって最も簡単な方法の一つは、基本に立ち返ること、つまり組織機能を理解することです。
組織が病理の有無でどのように機能するかを理解すれば、私たちは重要な治療ゴール/目標の一部をすでに特定したことになります。
例えば、
足底腱膜
足底腱膜には多くの機能がありますが、リハビリで特に注目すべきなのは、歩行時に弾性エネルギーを蓄え、放出する機能です。
足底腱膜の機能を簡潔にまとめると…(McDonald, 2016)
立脚期の前半では、内側縦アーチの靭帯が受動的に伸ばされ…
↓
=エネルギーが蓄積
立脚期の後半でアーチが元に戻ると…
↓
エネルギーが解放
病理がある場合(例えば足底腱膜炎や足底腱膜鞘炎)、負荷がかかると足底腱膜のひずみ耐性や弾性エネルギーの蓄積・放出サイクルの低下がよく見られます。
患者の負荷に対する耐性不足と、臨床家の通常の機能に関する知識を組み合わせることで、ひずみ耐性を高め、足底腱膜のエネルギー蓄積と放出能力を回復させるエクササイズを選ぶ指針となります。
足底腱膜にひずみや引張負荷をかける運動や動作は何でしょう?
足底腱膜のエネルギー蓄積と放出が必要となる環境を作り出す運動や動作は何でしょうか?
アキレス腱
腓腹ーヒラメ筋腱ユニットは、歩行やランニング、ジャンプなどの負荷がかかる動作の際、下肢を減速させたり加速させたりする機能を持ち、さらに弾性エネルギーをリサイクルします。
その人に存在する病理の種類や、それに続く負荷に対する耐性不足は、運動選択に大きく影響します。以下の例はあくまで参考ですが、機能に関する知識を活かして運動選択に役立てる方法を示しています。
腓腹ーヒラメ筋腱ユニットに影響を与える病理はいくつかありますが、損傷自体やそのメカニズム、そして機能低下が運動選択に大きく影響します。
例えば、中間部アキレス腱症がある場合、ひずみ負荷への耐性が低下し、腱自体のエネルギー蓄積・放出能力の低下がみられる可能性があります。
アキレス腱にひずみや引張負荷をかける運動や動作は何でしょう?
アキレス腱のエネルギー蓄積と放出能力を高める運動や動作は何でしょうか?
もう一つ、腓腹筋内側ーアキレス腱接合部における筋挫傷を例にとってみましょう。この場合、組織の硬さの増加と遠心性の筋力低下が損傷の発生要因であった可能性が高く、その結果、エキセントリック負荷耐性の低下につながったり、コンセントリック力を生み出しにくくなります。
腓腹筋ーアキレス腱接合部の組織のコンプライアンス(柔軟性)を向上させる運動や動作は何でしょう?
腓腹ーヒラメ筋腱複合体のエキセントリック/ 減速力を向上させる運動や動作は何でしょうか?
損傷の可能性のあるメカニズムや、目標とする機能に対する現存の機能を理解することが、運動選択や進め方の指針となります。
靭帯
粘弾性のある靭帯は関節のホメオスタシスと安定性に貢献し、筋肉の機能や活性化に影響を及ぼす固有受容器と運動感覚の情報を与えています。
引張負荷中に関節を安定させる
↓
引張負荷エクササイズ
固有受容器機能
↓
固有受容器エクササイズ
まとめ
症状管理に焦点を当てるのではなく、機能回復という視点から治療のための運動処方にアプローチすることから、患者が目標を達成するための有意義なプログラムを作り上げる道のりが始まるのです。
損傷を受けた構造の通常の機能を確認した後は、次のようなことを自分自身に問いかける必要があります。
組織に通常の機能を再現するような負荷をかける運動は何でしょう?
↓
エクササイズ選びに反映
運動選択や処方の微調整や洗練を図る際には、他にも考慮すべき要素があります。それは、患者の目標、組織の耐性、および求められる組織の耐性です。
これらの要素とその相互関係については、今後さらに詳しく探っていく予定です。
今回の記事が臨床家にとって、運動の選択をどこから始めるべきか、という出発点を見つける手助けになれば幸いです。
また、今後の記事でさらに深掘りを行う予定をしています。
全てがうまくいかないときは、患者が目指しているものは何なのか?そして、組織の機能は何なのか?を考え、それに基づいて道を辿ってみてください。
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