足部の機能解剖学には骨、筋肉、靭帯だけでなく
「脂肪体」というものが大きく関わっています。
膝関節でも同じですね。
膝蓋下脂肪体なんてものがありますよね?
脂肪体というのは
関節の動きを円滑にしたり、圧迫や剪断ストレスを抑えてくれる役割を持つ大事な存在です。
足部にも
kager’s fat pad
と呼ばれる脂肪体組織が存在します。
なんとなく存在は知っていたけど、
「イマイチこの脂肪体の役割がよくわからない」
「足部障害などにどのように影響しているのかよくわからない」
と思ったことはありませんか?
ちなみに私はそうでした。
というよりもkager’s fat padそのものをよく知らなかったです・・・
なので当然機能障害の原因の一つとしてkager’s fat padを考慮していませんでした。
(若手の頃の私は引くほどポンコツでした)
今回は
kager’s fat padと足部障害の関係性について
機能解剖学も入れつつお話していきます。
足部をもっと細かく見ていきたい!
足部の学びをもっと深めたい!
そんな人にはこの記事はお役に立てるかもしれません。
ぜひ最後までお読みください!
そもそもkager’s fat padとは?
ということでまずはこのkager’s fat padについて
お話していきます。
このあたりの話はもちろん解剖書にもしっかり載っていることですが
この記事をキッカケに解剖書も開きながら確認をしてみてください!
kager’s fat padは 、
アキレス腱と長母趾屈筋腱と踵骨に挟まれた三角形の空間に存在する脂肪組織のことです 。
この脂肪組織は
①アキレス腱関連領域
②長母趾筋屈関連領域
③踵骨滑液包ウェッジ
の3つに分けられます。
もちろんそれぞれの領域には 役割がありまして 、
●足関節背屈時のアキレス腱の滑走性を促す
●enthesisorgan (腱付着部構造の破綻を防ぐためにその周囲に存在する組織、すなわち滑液包。滑 膜性脂肪組織・線維軟骨組織・骨組織などの複合的な器官)への圧迫力の軽減
この2つが大きな役割として存在します。
このkager’s fat padの周囲には
後脛骨動脈
脛骨神経
が走行しており、
足関節運動における筋腱の滑走や骨運動によるメカニカルストレスから血管・神経を保護する機能があります。
その他にも
アキレス腱下の滑走性
アキレス腱付着部の圧縮力の軽減
retrocal-caneal bursa(アキレス腱及び踵骨腱の滑液包)の内圧調整をする機能もあります。
最初に勉強した時は
「思っていたい以上に重要な機能があったんだなぁ」
と知らなかったことに自分が引きました・・・笑
そんな足部の動きの中でも重要性の高い存在であるkager’s fat padですが、
これが外傷であったり過活動によって柔軟性を失い、拘縮が起きてしまうとどうなってしまうのか?
kager’s fat padに機能不全が起きると
このkager’s fat padが外傷やオーバーユースによって滑走不良や拘縮が起きると、
足関節の底屈背屈運動時に伴うアキレス腱の滑走性が低下、
アキレス腱付着部へのストレスが集中、retrocal-caneal bursaの炎症に繋がり、アキレス腱周囲に疼痛が生じます。
特に足関節の底屈運動時には踵骨隆起とアキレス腱との間のは③の踵骨滑液包ウェッジが入り込みます。
③踵骨滑液包ウェッジの滑走の障害は疼痛に強く関与します。
さらにこの部分の滑走性は②長母趾筋屈関連領域の動きも関係します。
<kager’s fat padの評価>
kager’s fat padに圧痛があり、脂肪組織の動きに左右差がある場合、
kager’s fat padに拘縮があると判断します。
特にアキレス腱付着部の深層に疼痛があり、 ③踵骨滑液包ウェッジの滑走性を改善する操作で疼痛が改善される場合も kager’s fat padに拘縮があったと判断します。
kager’s fat padに拘縮があったり、疼痛がある場合は
2つの運動学的要因を疑います。
①足関節の背屈制限
②下腿三頭筋の筋力低下
kager’s fat padは
アキレス腱と長母趾屈筋、滑液包で作られたスペースに存在し、
これらの組織間の滑走性の維持とretrocal-caneal bursaの内圧調整を行なっています。
下腿三頭筋や長母趾屈筋の滑走性が低下し足関節背屈制限が生じることで、kager’s fat padの拘縮が存在すると、この内圧調整の機構が破綻し、足関節背屈時に過剰な圧迫ストレスがかかります。
歩行時やスクワット(立ち上がりなど)にて
足関節背屈の動きが入るタイミングに痛みがある場合はkager’s fat padの拘縮が考えられます。
下腿三頭筋の筋力低下があると
歩行中など下腿三頭筋への負荷が相対的に強くなります。
そのため筋硬度が高まり、kager’s fat padが存在するスペース内の圧力が高まります。
また下腿三頭筋の筋力低下を後脛骨筋や長母趾屈筋などの深層屈筋群で代償をしようとすると、
kager’s fat pad内の圧力が上がります。
これの繰り返しにより、kager’s fat pad内の圧縮ストレスが増強して疼痛が発生します。
下腿三頭筋の筋力低下がある場合は、kager’s fat padへの負荷がかかりやすいということを憶えておきましょう!
kager’s fat padへの圧を抑える方法
kager’s fat padへの負荷がかかる要因は
- 足関節背屈制限
- 下腿三頭筋の筋力低下
が主な要因になります。
もちろんすでに硬さが出てしまっている場合は
徒手的に滑走性を出して上げる必要がありますが、
また同じ負荷がかからないようにするには
また滑走性が悪くならないようにするには
足関節背屈の可動域の拡大
下腿三頭筋の出力向上
が大きなカギになります!
運動療法としては
段差でのカーフレイズですね!
階段でもボックスでも10-20cm程度の高さがあればできます。
前足部のみを着けた状態で、後足部は浮かせた状態。
その状態で底屈によるカーフレイズを行います。
上げた後足部を基に戻すまでは通常のカーフレイズですが
そこからできる限り後足部を下におろします。
(この時に足関節が背屈しますね)
下腿三頭筋の筋出力の促通と足関節背屈の可動域促通を両方同時に行うことができる
一石二鳥のエクササイズのため、私は現場レベルで重宝しています。
徒手や運動療法で修正、整えることはもちろんできますが
ではインソールではそれができるのでしょうか?
インソールでよくなるの?
kager’s fat padの疼痛は主に滑走不良と圧縮ストレスになります。
滑走不良に関しては徒手的に介入したほうが早いですが、
圧縮ストレスに゙関しては、アライメントを整えることで抑えることは可能です。
そのため、
足部のアライメントを整えてくれるフォームソティックス・メディカルのような矯正インソールは有効な手段の一つと言えます。
実際に
kager’s fat padに疼痛がある患者さんで、徒手的に滑走不良は改善したものの
圧縮ストレスによって歩行の背屈時に伴う痛みがあったケースにおいては
フォームソティックス・メディカルで足部のアライメントを整えたことで
足関節の背屈可動域の変化が起こり、結果として背屈時の圧縮ストレスも軽減できました。
インソールで全てが解決できるものはありませんが
アライメントを整えることで結果的に圧縮ストレスを抑えることは可能ということです。
kager’s fat padの疼痛は意外と出くわすことの多いケースの一つです。
まずはこの脂肪組織がどういうものかを理解し、どういった要因から痛みがでているかが分かれば
インソールも有効な手段になります。
是非活用してみてください!
もしまだインソールという手段を持っていないのであれば
下記をチェックしてみてください!