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海外足病医が語る、アキレス腱症の最新治療法とは?

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【アキレス腱症】最新エビデンスに基づく「足病学深掘り講座①」[オーストラリア足病医✖日本人治療家対談!]

シリーズ対談企画!足病学深掘り講座①

「足病学深掘り講座」は、海外足病医のタリーシャ・リーブ先生と、学校法人呉竹学園の紀平晃功先生の対談企画として、YouTubeで絶賛公開中。全6回、テーマごとに最新の足病学を、学べる企画となっています。

目次

今回の内容は?

今回のディスカッション題材は「アキレス腱症」。アキレス腱症に対する日本語の定義や理解がまだ定着していない現状。治療アプローチの個別化や負荷管理の重要性、心理的要因の考慮、患者の期待と治療家の役割について議論しています。

【木村】こんにちは。日本足病学協会の木村誠です。本日は足病学深掘り講座ということで、オーストラリア足病医のタリーシャ・リーブ、そして呉竹学園の紀平晃功先生にお越しいただきました。お二人、よろしくお願いします。

これはシーズンもので皆さんに足病学を深掘りしていこうという企画なんですけれども。 二人にはですね、テーマを持って深掘っていくということをやっていきたいと思います。今日のテーマは「アキレス腱症」ということで、アキレス腱の障害ですね、こちらについて深掘っていければなと思います。

まずですね、お二人どんなふうに関わられているかと申しますと、タリーシャ先生に関しては、エビデンスに基づく足病学の臨床マスタープログラムというものを全世界的に発信して日本でも展開している先生になります。筋骨格系専門足病医として世界的に、オーストラリアの足病学学会、そしてイギリスのスポーツ学会から認可されたプログラムを開発した第一人者でございます。

そしてこの膨大なプログラムを監修・監訳しているのが紀平先生ということで、お二人の共通項であるこのP3のプログラムの中身について、そして紀平先生も治療エビデンス研究会という日本の部分で、サービスでエビデンスに基づく治療法展開をやっていますので、お二人にそういった観点からアキレス腱症を深掘り頂きたいと思います。

ではまず、P3のプログラムを監修・監訳している紀平先生から。タリーシャ先生もアキレス腱症いついて語っていると思います。その感想などをきっかけにするところから行きたいんですけど、いかがでしょうか。

【紀平】はい。アキレス腱症ということ自体、つまりアキレステンディノパシー(achilles tendinopathy アキレス腱症)という言葉自体が、アキレステンディニティス (achilles tendinitis アキレス腱炎) なのか、テンディノパシーなのかみたいなところがすごく丁寧に語られていて… 

日本ではまだアキレス腱炎だったり、アキレス腱症だったりって言葉の定義が定着していない中、これだけ病態について丁寧に語られているというのはとても楽しかったです。

「腱障害の連続体」臨床現場に適応するためには?

【紀平】その中でタリーシャ先生に聞きたいのは、「腱障害の連続体」、この概念ってめちゃくちゃ面白いじゃないですか。けれども、世界であんまりそんなに知られていなくて、日本では実はこれが日本語にあったのが初めてか2番目かっていうぐらいなんですよね。これを臨床で使うためには、どういったところを重点的に理解すればいいんでしょうか?

【タリーシャ】いくつか理解しておくべきことがあります。まず、活動レベルや患者の状態によって、症状がどのように変化していくかを理解すべきです。

通常の負荷に耐えられる状態か、異なります。そこで重要になるのが、プロトコルの違いに関する文献を見ることです。このダメージプロトコルではセットと反復回数を決めています。しかし、負荷耐性の低い人は、活動レベルが低い状態から始める場合、実際には過剰処方となり、状態を悪化させる人もいます。

ですから、負荷耐性をつけるために、一人一人に適した運動介入を提供することが重要です。それは、その人の生活を次のステップに導くためだと理解する必要があります。しかし、ケースによっては、負荷耐性の強化や回復をするために、負荷を取り除く必要がある事もあります。

特にエビデンスを学んだばかりの治療家は、文献に書かれているプロトコルを見つけるでしょう。そうすると、その症状を持つ人全員がそのリハビリプログラムを受けることになりますが、すべての人にそのプログラムが必要なわけではありません。その人のスタート地点がどこなのかを理解することが重要です。その上で、実際に負荷を加えたり、減らしたりする必要があるかどうかを判断します。

日本の臨床現場:現状は?

【タリーシャ】先ほど日本の研究現場や臨床現場ではこれはかなり新しいことだとおっしゃいましたが、そうでなくても、アキレス腱症の管理について、紀平先生はかなり経験を積まれていると思います。日本の臨床現場では、このようにアプローチされているのでしょうか?

【紀平】もともとそういったところもやっていますが、どちらかというと、負荷を減らす治療をされてる治療家の方が多いと思います。

僕はアキレス腱症の方に対して、負荷を徐々に増やしていくプログレションさせていく治療をしています。ただそれだけだとやはりうまくいかない人が多いんです。何でうまくいってなかったのかというと、痛みが出てきてしまうからです。じゃあ、痛みをどのへんまで許容するかって、ある程度まで許容していくんだけれども、やっぱり痛みが出てしまうとそこで負荷をかける治療をやめてしまうってことが多かったので…

今回、タリーシャ先生の講義を聞いてからは、痛みが出てもある程度の負荷までだったら許容していいんだなということがわかりました。

【タリーシャ】コースから何か得るものがあったようでうれしいです。では、信号機システムをリハビリテーションプロトコルに導入してから、患者の症状の再発が減り、リハビリテーションプロトコルが守られるようになったという実感はありますか?

【紀平】もちろん、それはあって。患者さんが痛みを許容するというのはもちろんなんだけど、負荷を本当に丁寧に丁寧に積み上げていくということをできるようになったというのが一番の変化かなと思いますよ。

逆に質問なんですけど、今のその腱障害の連続体モデルというのを説明して頂いて、それについてどう臨床で応用すればいいかってことを教えてもらいました。その中ですごく印象的だったのは、今までだったらアキレス腱障害アキレス腱性アキレス腱炎にはこの治療がいいんだよと言われていたものが、実はそうではなくて一人一人個別に見ていって、その人に応じたスタート地点を見つけないといけないということだったと思うんですよね。

そういった意味では、実は「病名に対して何かの治療法」ではなく、タリーシャ先生が教えてくれているのは、病態はもちろんあるんだけど、その「病態を抱えたその人に対してどんな治療がいいんだろうか」というのを丁寧に見ていかないといけないってことなのかなっていうふうに感じました。

なのでまとめると、人によって治療が変わるっていうことが一つと、もう一つはリハビリ運動療法において痛みは許容していいんだということが、日本の治療にとってはすごく新しいことだと思うんですよ。

【タリーシャ】私が目指していたのはそういうことだったので、それが伝わったようで良かったです。

治療家も患者も痛みがよくなっているか、悪くなっているかを判断基準にしていることが多いのです。しかし、私たちが知っているように、症状が長く続けば続くほど、痛みは組織の損傷を示すものではなくなります。痛みがあっても、リハビリテーションができるようにサポートすることで、痛みに対する反応を軽減することができます。

もう一つ質問です。このコースの後、痛みに対して心理的に追い込まれている患者がいるとしたら、リハビリの回数を減らして、教育を行ったり、患者に安心感を与えることに注力しますか? 

【紀平】発症メカニズムに心理社会的な問題心の問題が入っているというわけではないんですけど、膝のACLを切った選手で復帰の時に「ちょっと不安だな」って思う選手がいたんですよね。 その選手に対して、実際運動をやってみて、段階的に運動を経験させてみて、その不安要素を徐々に減らしていく。

で、経験させて、「これはどう?」「大丈夫?それとも大丈夫じゃない?」「何が怖い?」っていうことを聞いて、徐々に運動の負荷を高めていきながら、その選手に大丈夫な運動を増やしていった。

その結果、選手が「ああ、これなら大丈夫である」ということを感じて、私に何か言うことなく、そのまま試合に復帰したっていう例があって、そこはすごく良かったなと思います。

【タリーシャ】アキレス腱症について話しているにも関わらず、これは実に良い例です。特に膝の損傷 ACLを扱う場合は、それを裏付けるエビデンスがたくさんあるからです。スポーツに復帰するための心理的な準備は、スポーツに復帰するための機能的な強さと同じくらい重要です。これは本当に良い例だと思いますし、これらの原則について話しているときと同じように局所的な組織の症状以外の要素にも関連する話です。

受動的治療・能動的治療 「どっちが効果的?」

【紀平】話をアキレス腱症、アキレス腱障害に戻すと、腱障害の治療についてこれまで言ってきたようなエクササイズじゃなくて腱障害に関して「治療でこれやっちゃダメだよ」「これはダメ」っていう10個のことがあるじゃないですか。

その中でも、日本でむちゃくちゃ多いのが、やっぱり患者さんが受けになる治療。ただ、寝ていればいいだけ。つまり、私たち側からいうと、マッサージをしたり、物理療法の機会があったり、何か患者さんに何かをやってあげる治療っていうのが日本だと多いと思うんですね。

むしろそれがメインであって、患者さんのふくらはぎをマッサージしてアキレス腱をマッサージしてストレッチをしてテーピングをして何か電気とか当てて、それで終わり!っていうことがすごく多いと思うんですけど、このことについてタリーシャ先生どう思いますか?

【タリーシャ】どの国にも存在する問題だとは思いますが、その理由の一つは患者が私たちが何かを改善してくれるという期待を持って来院されることがあるからです。また、治療家にとっては、治療効果が短期的で症状が再発することが多いので、何度も患者さんが来院します。あまり良くありませんが、それで来院の予約がいっぱいになってしまうので、お金儲けがしやすいんです。

患者の期待が原因であることもあれば、治療家が適切な理由で運動療法を行っていなかったり、運動療法がどのような効果をもたらすのかを理解していなかったりすることもあります。そして 腱の痛みがあるときに何をすべきかという10の注意点があります。

これはジョエルクック氏による論文で、彼は腱症の症状連続性も構築しました。数年前、彼はまた別の論文を発表し、症状の連続性を再検討しました。そして、治療介入の位置づけについてもです。

つまり、反応性の高い腱の場合、最初は痛みに対する反応を重視します。しかし、痛みが和らぎ始め、運動を導入できる状態になったら、治療介入は痛みにフォーカスしたものから、機能回復にフォーカスしたものへとシフトしていく必要があります。しかし、多くの治療家はそれをしませんから、何度も患者を見ることになるのです。そしてまた悪くなり、良くなったり、悪くなったりを繰り返すのです。

ですから、受動的な治療を行うことに慣れてしまっている場合は先に治療を行うことでもかまいません。まずは受動的な治療を使って患者が運動療法を始めるきっかけを作ることだと思います。治療家にとってベストなのは、受動的治療と能動的治療の中間地点に当たるところにいることです。

【紀平】いや、日本人の治療家ってすごく真面目な人が多くて、何とか患者さんを治したいなって思っている人が多いので … 多分運動療法のこと、あるいはタリーシャ先生が説明してくれてるような治療法のことを、まだ知らない人というのがむちゃくちゃ多いと思うんですよ。

だから、日本人の治療家の先生がこのタリーシャ先生の運動療法について知れば アキレス腱症もっとより良くより早く治せるんじゃないかなという風に思いました。

【タリーシャ】私は人を助けることにとても情熱を注いでいますが、今はそれを教育分野にシフトしています。単に目の前の人を助けたいという気持ちから、多くの治療家が患者を助けるサポートをしたいという気持ちに変わりました。

なぜなら、そうすることで1対1の患者だけでなく、世界規模の治療成果を上げることができるからです。それが私がオーストラリアでこのコースを開発した理由です。治療家が行っていることと、ベストプラクティスやエビデンスが示していることとの間にはまだ大きな隔たりがあったのです。

ですから、基本的にこのコースは現在のエビデンスや文献が入っていることを伝えるだけでなく、それを臨床現場にどのように応用するかを示すために開発しました。アキレス腱症に関して私が行ったのは、紀平先生と通訳の協力も得てこのコースを作ったことです。エビデンスの理解と、治療家にとっては理解し、実践するのが難しい治療の管理をまとめています。アキレス腱症の患者を救う事ができる、業界をリードするような治療家になるための手順がステップバイステップで学べると思います。

最後に

【木村】はい、ということで!今日はアキレス腱症についてお二人に深い話をお伺いできたのですが、僕なりの見解を最後にまとめますね。

まず、タリーシャ先生の講座で言われてるのが、「アキレス腱症に実は運動療法効果的だよ」という大前提があり。それに対して、「アキレス腱症にはこれ」っていう考え方じゃなくて、一人一人「このアキレス腱症の場合はこうだし、それが高齢者の場合はこうだし、スポーツマンの場合はこうだし」みたいな考え方のもと、その情報を使ってくれという前提がありますと。

さらに言うと、それの運動療法の実施という意味では、「痛みがあっても中止しない方がいい」というような概念も日本ではまだまだ新しいというところですね。

そして、(アキレス腱症も含め)腱症に関してやってはいけないことというのもエビデンスとしてあるとのことなので、そんなことが学べるタリーシャ先生の講座で是非アキレス腱症の治療について詳しくなって頂いて、そのことで悩んでいる患者を救っていただきたいなと思います。

足病学深掘り講座、いかがだったでしょうか。今回シーズン1ですので、続いて次回も症例、そしていろんなことを深掘っていければなと思います。また二人よろしくお願いします。

それでは、また次回!

オーストラリア足病医学会公認「世界中の足病医が学ぶ治療法」

あなたは足底腱膜炎の治療で、病態生理学やリスク因子の正しい知識を持っていますか?この足病学臨床マスタープログラムは、世界中の最先端の医学知識を、日本語で学べる唯一無二のプログラムです。足底腱膜炎に対する治療アプローチの概念が180度変わり、患者さんへの貢献と自身のキャリアに大きな差をつけることができるかもしれません。世界基準の足病学が推奨する、足底腱膜炎の治療法をマスターしてください。

  • オンライン講座(合計12時間18分 / 20動画)
  • 濃密なフルカラーテキスト資料(203P / 406スライド)
  • 特典(足病医が臨床使っている11の資料)

講師紹介

タリーシャ・リーブ

日本足病学協会 理事

筋骨格系専門足病医(オーストラリア足病医学会所属)

B.App.Sc.(Podiatry) / 応用理学士(足病医)

Graduate Certificate in Clinical Rehabilitation

(臨床リハビリテーション修士)


オーストラリアで15年の臨床経験を持つ足病医。オーストラリア足病医学会(APodA)、イギリスのスポーツ医学界(BJSM)の両団体から世界初の承認を受けた、足病医向け教育プログラム[足病学臨床マスタープログラム]の開発者。世界29か国/8万5000人の会員組織を持つ国際足病医団体「FIP」公認の最大級イベント「Foot&Ankle Show」登壇者。オーストラリア足病医学会主催の足病医を対象とした臨床リハビリテーションワークショップツアーを豪州全域にて担当。2022年に行われた2回の来日実技セミナーでは全国から参加した50名超の参加者の満足度が10点満点中9.65点という大絶賛を受けた。

紀平 晃功

日本足病学協会 理事
呉竹学園東洋医学臨床研究所
東京医療専門学校 専任教員
修士(保健医療学)
JATI-ATI / 柔道整復師


柔道整復師や鍼灸師を養成する呉竹学園で教諭を務め、臨床治療/トレーナー活動/研究をしているトップエキスパート。トレーナーとしては、大学女子バスケ日本一チーム(全国6連覇)、社会人ラクロス日本一チームをサポートし、某競技オリンピック選手、日本トップクラスのトライアスロン選手もサポート中。スポーツ医科学総合誌『月刊スポーツメディスン』でエビデンス活用の連載も担当している。呉竹学園での教育/臨床の傍ら、法政大学大学院にて博士後期課程で研究に従事。精査したスポーツ医科学論文数は1500以上。累計1万本以上を読み込んでいる。2022年には、オーストラリア足病医 タリーシャ・リーブ先生の足病学臨床マスタープログラムを監訳・監修し、海外足病医の知見を、多くの日本の治療家へ伝えている。

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