ここで、臨床アプローチについて 紹介させていただくと、 足病学に限らず、他の臨床現場においても これまで主流とされてきたのは 「バイオメディカル・アプローチ」 と呼ばれるものです これは、病態を特定して その病態を治療するという方法で 特に臨床経験の浅い治療家が 実践することが多いと想像されます これに対してご紹介するのは 「バイオサイコソーシャル・モデル」というものです このモデルができてからは40年ほど経ちますが 実際に臨床の場で活用されるようになったのは ここ10-15年です バイオメディカル・アプローチと バイオサイコソーシャル・アプローチの違いは バイオサイコソーシャル・アプローチは、人を診るという点です 怪我や病態そのものだけでなく その周りに付随する 患者の個人的な要因全てに注目します これらは個々の患者をどう治療すべきか という決定に関わる 重要な要素です 我々 プログレッシブ・ポダイアトリー・プロジェクト (P3)では このバイオサイコソーシャルのモデルを通して 怪我や病態にアプローチしています つまり 患者を「怪我をしている人」として見るのではなく 患者はこの怪我のせいで どのような生活の場面に支障をきたしているか とアプローチするのです 臨床現場において バイオメディカル・モデルと バイオサイコソーシャル・モデルの違いは 問診時のコミュニケーションにあります バイオメディカル・アプローチの場合は、 治療家が患者のことを深く知るための時間が少ないので 患者がどうなりたいか、ということや 患者がその病態のせいで受ける心理的影響 を理解することが困難です 例えば、筋骨格系の疾患で来院した患者に対し バイオメディカル・モデルで問診する場合は 症状の描写だけで終わってしまいます 病歴からはじまり どのような症状が出ているか いつから症状が出ているか 痛みの程度はどのくらいか などを聞いたら、すぐに評価に移ります 筋力テストや 関節テストや歩行分析など を行った後は すぐに治療の処方に移ります このような問診では、重要な情報が欠けてしまうのです 特に 慢性的もしくは複雑な疾患をもつ患者の場合は 治療結果に大きな悪影響を与えてしまいかねません 一方で、バイオサイコソーシャル・アプローチでは 問診の際に 多くの質問や会話が取り入れられます 例えば、患者へ最初に投げかけるのは 「お困り事は何ですか? 」 「どういう理由で来院されましたか?」 「何が問題だと思われますか?」といった種類の質問です 決して、怪我をした患部に関する質問ではありません そして質問はさらに 「その症状で日常にどういった不具合がありますか?」 「どの程度ストレスを感じていますか?」 「ご自宅で不便がありますか?」 といった内容で進めていきます 実際このようなアプローチが 患者の症状に影響を与える という証拠が、 多くの文献で確認されているのです このバイオサイコソーシャル・アプローチの大きな特徴は 患部を治療しているのではなく 患者を治療しているということを理解することです ですから、問診の時には患者と多くの会話をし 一緒に目標を設定します 「何を目指して治療していきたいですか?」 「私にサポートを求めて来てくれたのですよね」 「この痛みや症状のせいで出来なくなった活動は何ですか?」 患者にこのような質問を沢山することで 治療目的が次第に定まってくるのです ただ「足首をリハビリしましょう」という のではなく 「サッカーに復帰できるように足首のリハビリをしましょう」 と伝えて 患者が痛みなく活動に復帰できる ということにフォーカスします これが治療にどうして重要かというと 患者との信頼関係を築くことになるからです バイオメディカル・アプローチで 「あなたにはこの症状があるのでこの運動をしてください」 と伝えるだけでは 患者本人に治療を続けるモチベーションを与えることができません 時には患者は 「治療家に言われたからこの運動やっているが、 本当に意味はあるのか?」 と思い始めてしまい、運動をしなくなることもあります しかし、バイオサイコソーシャル・アプローチで 患者に 「この運動は、あなたのやりたいスポーツに復帰するために 足首を強化してくれるので 治療メニューに取り入れるべきです」 と言われた方がモチベーションは上がり、運動を続けてくれます とても小さな違いに感じられるかもしれませんが 実際、患者への接し方や 治療への成功に かなり大きな違いを生みだすのです
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